日本国民に告ぐ
誇りなき国家は、滅亡する
小室直樹・著 ワック出版 
第1章 誇りなき国家は滅亡する

 日本破滅の予兆

 日本は何者かに呪われている。何か強い意志がそこに働いているとしか考えられない。日本人は、ハーメルンの笛吹き男の笛の音に導かれて怒濤の中へ突進していった鼠の大群のように、投身自殺しようとしているのだろうか。
 平成元年(1989年)は、歴史の転換点だった。昭和天皇崩御の年であり、ヒトラー生誕100年の年でもあった。1990年以降は、言うなれば「ヒトラー新世紀」。
 6月4日に天安門事件。人民中国が人民を虐殺し、中国の赤い星は墜ちて微塵となった。
 11月9日にベルリンの壁撤去。共産主義による自由弾圧の代表例であったベルリンの壁が撤去されたことの意味は、限りなく大きい。
 世界史は目眩めくスピードで激動し、流転の時代に入った。
 ソ連は、苦悶して、のたうちまわる。諸民族の反乱。労働者の反抗。20世紀最後の大事件、ソビエト帝国の崩壊。マルクス・レーニン主義は没落へ向けて一直線。
 ある作家いわく、
「天安門事件のニュースに接したとき、これほどの事件で、今年の大ニュースは打ち止めだと思ったのに、さらにずっと大きな事件の予兆にすぎなかった」
 予兆!
 この年(平成元年=1989年)、あたかも昭和天皇が神去りまつるを待ち構えていたかのように、日本破滅の予兆が兆したのであった。
 この年、忌まわしき「従軍慰安婦問題」が日本人から持ち出された。この年、「朝日ジャーナル」に、「日本国は朝鮮と朝鮮人に公式陳謝せよ」との意見広告が、半年間にわたって掲載された。はじめは、これほどの大事件に発展すると思った人は鮮(すくな)かったろう。しかし、ここに濫觴(らんしょう)を発した(始まった)「従軍慰安婦問題」は、渓流となり、川となり、河となり、ついに滔々たる大河となって全日本を呑みつくそうとしている。
 誰か狂瀾(荒れ狂う波)を既倒に廻らす(押し返す)者ぞ。
 ご存じのことと思うが、はじめに、ことの経緯を鳥瞰しておきたい。
 
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