日本国民に告ぐ
誇りなき国家は、滅亡する
小室直樹・著 ワック出版 
第5章 日本国民に告ぐ

 “魂”なき日本の戦後教育

 世界で唯一という点は、これだけではない。日本は、学校で自虐的な暗黒史観を教える点でも、世界で唯一なのである。
 かつて俳優の森繁久彌氏は、次のように述べたことがある。

「ヨーロッパではどの国も自国を誇り、国旗を大事にしている。40日間のヨーロッパ旅行で、私がこの目でじかに見、そして皮膚で感じたのは、このひとことにつきるのだ。かえりみて私の心の中には悲しみと憤りが渦を巻いている。日本では『愛国』という言葉すらインテリの間ではタブーとなっているようだ。自分の生まれた国を愛し、それを誇りに思うという、人間の自然な感情をだれかに売り渡すほど、日本人は卑屈になったのだろうか」(昭和35年11月12日付読売新聞夕刊)

 実際、いまでもほとんどの小学校、中学校、高校、大学、大学院がセレモニーでも国旗を掲揚しない。国歌の斉唱もない。文部省の調査に対して、「国旗の掲揚を実施している」と回答している学校でも、単に校長室に飾ってあるだけ、卒業式で会場の袖に設置しているだけ、というのが実態である。
 なぜ、こんなことになってしまったのか。文部省と日教組による戦後教育の問題点については、次章で詳述するが、大本の原因は、GHQの政策である。GHQが国旗の掲揚を許可制としたからだ。音楽の教科書から「君が代」を削除したからである。「修身」を廃止し「社会科」としたからである。「教育勅語」を廃止したからである。
 それだけではない。GHQがもたらした「東京裁判史観」と「戦後教育」は、戦後日本に恐るべき「急性アノミー」現象をもたらしたのである。
 
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