2020年?月
首都直下・南海トラフ
日本消滅
21
巨大地震が起こらない方に賭けますか?
 
 
 今回はまず日経新聞の記事を原文のまま引用します。
 見出しにある「30年以内」というのは、地震の起こる可能性を表現するときによく使われる言葉です。たとえば「南海トラフ巨大地震が発生する確率は30年以内で70%」といった形で表現されます。
 この表現で、多くの人は「まだまだ先の話だ」というふうに解釈するのではないかと思われます。しかし、地震予知センター長の平田直氏は、それは間違っていると述べているのです。
 では、まずその内容に目を通してみてください。

■日経新聞 2014年12月17日(水)

 「30年以内」には今日、明日も含まれる

平田 直氏 東京大学地震研究所 地震予知研究センター長・教授
木場 弘子氏 千葉大学客位教授

 ……
 
木場 つまり首都直下地震が起こる確率は高まっているということですか。
 
平田 首都地域の下で発生する地震を「首都直下地震」と呼びますが、日本の首都圏は世界でも地震リスクが高い都市圏といえます。政府の地震調査研究推進本部地震調査委員会は04年に「南関東地域でM7クラスの地震が発生する確率は30年以内で70%」としましたが、今年4月の発表でも首都直下地震につながる相模トラフ沿いの地震活動の長期評価で同様の数値を公表しており、備えが不可欠です。
 
木場 70%とはずいぶん高い確率ですね。しかし30年と聞くとまだ先のことのように感じてしまうのですが。
 
平田 「30年以内」を「30年後」と誤解する人がいますが、30年以内というのは、「30年後かもしれないが今日、明日かもしれない」大抵の人が一度は巨大地震にあうという意味です。
 (中略)
 
木場 世界ではM6程度の地震でも、レンガ造りの家が崩壊するなど大きな被害が出ている地域があります。日本は耐震技術が進んでいるとはいえ、老朽建物も多いことが心配です。
 
平田 昨年末の中央防災会議の最終報告書では、都心南部直下でM7クラスの地震が発生し、震度6強以上の強い揺れが生じた場合、揺れによる全壊家屋は最大約17万5000棟と予測されています。建物倒壊による犠牲者は最大約1万1000人、要救助者は最大約7万2000人。また、地震火災による消失が最大約41万2000棟で、建物倒壊などと合わせて最大で約2万3000人の火災による犠牲者が出るとみられています。
 火災の発生原因は建物倒壊などによる電気に起因する出火が過半を占めています。このため、倒壊建物を減らすことが滅災には欠かせません。1981年の新耐震基準以前に建てられた老朽建物が、首都圏にはまだまだ多数ありますから、その耐震化策が急務です。


 
「30年以内」という表現は、地震を予測する側にとっては非常に便利でしょう。
 なにしろ、その予測が正しかったかどうかが証明されるのは30年が経過したあとのことだからです。その時点では、そのような予測がなされていたことを記憶している人はいないでしょうし、すでに亡くなっている人も多いでしょう。
 逆に、その数字には当然「今日、明日」も含まれているわけですから、今日地震が起こっても、「予測が当たった」ということになるわけです。
 地震を予測した側は「だから言ったでしょう」と言うことができます。それを国民がどう受け止め、被災想定エリアから移住するなどの対策をとるかどうかは、「自分で判断してください」ということになります。便利ですね。
「首都直下型地震は東京オリンピックの年までに100%起きる!」という藤井聡氏の警告にも強く反応しない人たちが「30年以内に70%の確率で地震が発生する」と言われても、その警告を無視または軽視するのは当然でしょう。
 ところが、予測する側は「地震が今日起こる可能性が70%あります」と言っているわけです。
 天気予報で「今日の雨の確率は70%」と言われれば、まだ雨が降っていなくても、傘を持って外出する人が多いでしょう。つまり、予報を信じて「雨が降る」ほうに賭けるわけです。
 その結果、雨が降ればその賭けが正しかったということになりますが、もし予報が外れた場合も、降らない確率が30%あったわけですから、文句を言うことはないでしょう。
 地震の場合はどうでしょうか。「今年地震が発生する確率が70%」という予測をされても、被災想定エリアの人が移住したり、避難したりするでしょうか。台風の最中の「避難勧告」や「避難指示」にも従わない人がいるくらいですから、まだ地震の揺れが感じられないときに避難する人はいないと思われます。多くの人は毎日「今日はまだ地震は起きない」というほうに賭けているわけです。
 まして「30年以内の確率」と表現されれば、危機意識はさらに薄められます。せいぜい「1週間分の水や食料の備蓄」程度の対策で済ませることでしょう。
 この新聞記事は、そのことの危険性を理解していただくために掲載しました。首都直下地震や南海トラフ巨大地震は「今年起きる可能性が70%ある」と考えておく必要があるということです。
 皆さんは今年巨大地震が起きない方に賭けますか?
 それとも地震学者でもない私の予測に賭けて、抜本的な地震対策に着手しますか?
 いずれにしても、「賭け」の成果を手にするのは皆さん自身です。そして、この賭けの結果は、30年後でなく今年中に必ずわかります。
 
 
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