輪廻転生 
驚くべき現代の神話
J・L・ホイットン/J・フィッシャー著
片桐すみ子訳 人文書院
 
 

 ● 一生を回顧する

 魂の眼前には自己評価のために、一瞬のうちに展開するパノラマのようなフラッシュ・バックがつきつけられる。過ぎ去った人生の所業が、これにひとつ残らず含まれているのだ。エマニュエル・スウェーデンボリはこの回顧のありさまを、ひとりの人物が生まれてから死ぬまでの行状記を朗読する形式の劇にした。しかしホイットン博士の被験者の体験によれば、その過程はもっと短くて瞬時に起こり、何もかも含んだ完全な前世の再体験だという。ある被験者はこう語る。

 「人生を描いた映画の画面の内部に入りこんでしまったみたいです。人生の一瞬一瞬が実感をともなって再演されるのです。何もかも、それもあっという間に。」

 この前世の回顧によって、完全に記憶を回復しながら、魂は自分自身が記憶し得た以上のことまで知る。気づかなかった世界の全貌がたちあらわれるのだ。大きな絵には細部まで鮮明に描きだされるように、このときになってはじめて魂は、自分が幸福を棒にふったときのことや、思いやりを欠いて他人を傷つけたときのこと、命にかかわる危険の間際にあったときのことなどを理解する。
 自分の人生を写したこのビデオテープのようなものから、魂は細大漏らさず意味をくみとり、きびしく自己分析をすすめていく。このときが魂にとっての決定的瞬間で、この間は裁判官たちも表面にでてこない。ホイットン博士の被験者の話では、裁判官たちは、昔から言われてきたように、いかめしく振る舞ったりすることはない。むしろ、生徒たちをはげまして過去の過ちから学びとらせてやろうとする、いつくしみ深い教師のように振る舞う。裁判官たちはこれまでの人生での重要なエピソードをしきりに取りあげては助言を与え、たとえそれがいかに芳しくないものだったとしても、どの体験もその人を成長させてくれるものだ、と元気づけてくれる。
 回顧されることがらは、その人の望み、友情、理想、趣味や好み、心の成長の過程など、すべてにわたる。裁判官たちが助け船をだして、多くの生涯を見通して大局的な観点から行動を客観的にとらえさせてくれるので、魂は感情の高ぶりを感じることもなく平静でいられる。一回の人生だけから霊的発展の長い旅路の進み具合を見極めるのはむずかしく、それを知る唯一の方法はカルマの傾向やパターンを調べてみることである。
 前世の回顧は「アカシック・レコード」から引き出されると思われる。このアカシック・レコードというのは、宇宙のエーテル的な物質に残された過去のすべてのできごとの不滅の痕跡であると古くから預言者や神秘学者たちが言ってきたものだ。アメリカの偉大な透視者エドガー・ケイシーは、アカシック・レコードが「心の世界にとって、物質界の映画に相当するもの」であるといっている。透視者たちはこの宇宙の記憶と接触できるらしいが、催眠の被験者もこの膨大な非物質界の記憶庫に入ることを許されているかに見える。退行を行なって前世のある場面に焦点をあわせるときには必ず、催眠下の人物は直観的にその場面の範囲外のことまでくわしく知る。完全な再現能力をそなえたビデオテープのようなものから、情報が引き出されるごとくに物語られるのだ。
 
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