ユングは
知っていた
コンノケンイチ・著 徳間書店 
第5章 迫り来る最終戦争と人類の突然変異

 「神」の目隠し

 これらの疑問に、聖書は次のようにズバリ答えている。

 神は、彼らに鈍い心と、見えない目と、聞こえない耳とを与えて、きょう、この日に及んでいる。(「ローマ人への手紙」第11章8節)

 肉体や感覚機能はくり返し鍛練を行なっていれば、誰でも熟練して上達するのが自然である。しかし超能力の場合は逆で、ユングやウォルター博士の言うように、人の顕在意識(五感機能)の遮蔽を行なって、深層無意識を活性化させることで可能になってくる。例を挙げれば、インドのヨガ行法、日本の山岳修験道や座禅、密教のマントラや護摩行法などが、そのノウハウを含んでいると言えるだろう。つまり人の存在をつちかう感覚器(五感)こそ、超能力やシンクロニシティの発現を妨げる、大きな要因になっていると考えられる。
 この問題と関連して見逃せないのが、アポロ宇宙飛行士たちの体験である。彼らの報告によれば、宇宙空間(無重力)や月(重力が地球の6分の1では、人間の超能力はいちじるしく増大してくるという。不思議なことに人間の脳は、地球を離れた方が、機能がパワーアップするのである。
 アポロ16号のチャーリー・デュークは、宇宙では頭の中が明晰そのものといった感じになり、意識が拡充して何を考えてもすぐにピンとくる。宇宙船の操作にしても、地球上での訓練の何倍も効率的にできた。「透視能力」とは、こういう状態をいうのではないかと思った、と語っている。
 アポロ14号のエド・ミッチェルの場合は作用が特別に強力で、ほんとうに自分は超能力をもったのだと信じてしまった。
 1971年2月にアポロ14号が月に向かって飛行した際に、彼は地球にいる四人の被験者に向けてテレパシーの実験を行なった。ヘラルド・トリビューン紙がミッチェル船長の言葉として1971年6月23日の紙面で伝えたところによれば、結果は「期待していたより遥かにすごいもの」だったという。そしてミッチェルは月から帰還後、ESP研究所を設立してしまったのである。
 アポロ15号のジム・アーウィンは、もっと具体的に語っている。

 月では、神に何かを問いかけると、すぐに答えが返ってくる。声として語りかけてくるというわけではないが、神が自分に語りかけているというのがわかる。超能力者同士の会話というのは、きっとこういうものだろうと思われるようなコミュニケーションなのだ。月での活動は、予期せぬ困難が次々に起こってくる。ヒューストンに問い合わせても、時間がかかりすぎて間に合わないことがある。どうすればいいのですかと神に問う。するとすぐに答えが返ってくる。誰かに聞いて答えてもらうのとはプロセスが違う。全プロセスが一瞬なのだ」(『宇宙からの帰還』立花隆著・中央公論社)
 
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