ユングは
知っていた
コンノケンイチ・著 徳間書店 
第5章 迫り来る最終戦争と人類の突然変異

 「眠らされている」私たちの脳の力!

「進化」とは、何もない状態のところに、いきなり何かが付与されることではない。もともとあった状態が変化したり、レベルアップされることである。となれば(聖書の予言が成就するのならば)、私たちはすでに驚異的な力を内奥に秘めていることになる。
 古くから日本人に親しまれてきた弘法大師・空海は『弁顕密二教論』のなかで、私たちは本来みな仏なのに、そのことに気づかずに自分で自分の本性を分からないでいると言っている。これを「衆生秘密」といい、その能力を開花させるのが密教における多くのノウハウである(これについては第六章で詳しく述べる)。
 古来、超能力は誰もが有していたが、人が道具を使用するようになって、超能力によって危険から身を守る必要が少なくなったために徐々に失われてきた、というのが一般的な解釈だった。しかし最近になって、私たちの脳機能の大部分が何ものかによってクローズされて(閉じられて)いるという事実が、科学として大きく浮上してきたのである。
 アメリカの精神分析医、ジェイムス・S・ヘイズは自著『ザ・サイエンティスト・スペキュレイツ』のなかで、次のように述べている。

 私が長い間感じてきたことだが、テレパシーなどにみるESP能力は、いったいどのようにして起こるのか? という古くからの疑問は妥当ではないと思う。そうではなく、テレパシーが本当に起こるのなら、それが常に誰にも起こるのを妨げている要因は何なのか? 大脳は他人の意識が自分に流入してくることから、どのようにして自分の身を守っているのだろうか?という問いの方がまだ実りがあろう。

 ヘイズの疑問は「本来、テレパシーなどのESP能力は誰にでも備わっているのに、それを常に発揮するのを妨げている要因は何なのか?」ということだった。
 ユングも次のように述べている。

 ESP研究にとって、きわめて厄介な様相が一つある。シンクロニシティや超能力現象は頻繁に起こるものではないし、その使用も特殊な人を除いて不可能なことである。私たちはシンクロニシティという現象に伏在している根源的なもの、無意識という心的な過程を支配したり、制御できないからだ。

 イギリスの著名な神経生理学者W・G・ウォルター博士も、1969年のエディトン記念講演で次のように述べている。

 電気的な装置で調べたところでは、人間は意思の力だけで外界の現象に影響を与えることができるが、きわめて特殊な精神の集中を必要とし、大脳の興奮と弛緩という逆説的な混合状態を必要とする。

 ダーウィンに“消された”人物として有名なウィリアム・ジェームスも、かつては同じことに頭を悩ませていた。

 私たち人類は、当然あるべき状態にくらべると半分しか目が覚めていない。われわれの火は消されているし、われわれの設計図は何ものかに阻止されている。
 ある人たちは、自分の正当な資質から遮断されているという感じを極端に抱いている。私たちは多くの未知の力を所有しているのに、それを習慣的に使うことができず、本来の自分が有する能力のはるか下限で、もっとも劣悪な条件下で行動している。
 私たち誰もが所有する『生気あふれた貯蔵物』を、どうすれば自在に解き放つことができるのか? この罠から、どのようにして人は逃れることができるのだろうか?
 
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