人生を変える方法

 私たち人間は、考えを変えることで自分の世界を立て直すことができる。霊界にあるのは、
愛の力だけだ。
 天国というのは、思考によってつくり出された愛の意識界なのだ。私たちの世界は、私たち
の思考で形成されている。前向きなものの考え方は、常に心をいやす力を持つ。あなたは、肉
体を放棄したあとも、ともに生き続ける思考のかたちをつくり上げていることになるのだ。
 私たちの人生の数多くの状況をカルマが支配しているとは言え、人生の中には考え方を改め
ることで変えられる状況というのもたくさんある。

 ヴィッキーの場合

 ヴィッキーという名のクライアントが、3度目の面会に訪れた。彼女と最後に会ったのは、その1年半ほど前のことだった。彼女は、まるで別人になっていた! 最初、彼女とはわからなかったほどだ。
 10キロ近くも体重を減らし、ヘアスタイルを変え、気性まで変えていた。
 見違えるようじゃない、と私は彼女に言った。
 「私が最後にここにきたときのことをおぼえてる?」と彼女はきいた。
 「あなた、とても落ち込んでいて、否定的で、絶望的だったわね。それに、私に腹を立ててたわ」
 「あなたは私に、自分を哀れむのはやめなさい、あなたに解決できない問題などひとつもないわって言ったのよ」と言って彼女は笑った。
 「どうやら私のアドバイスにしたがったみたいね」
 ヴィッキーは最初の面会の日、怒りと不満をつのらせながら私のもとを去っていった。私が彼女の要望に対して、鈍感だと思ったのだ。私は彼女に、考え方を変え、自分の世界を変えなければならないと告げていた。毎日目を覚ましたら、数分間ほど感謝すべきことをすべて頭に思い浮かべるのだ、とアドバイスした。これが彼女にとっては途方もなくくだらないことに思えたらしい。だが何らかの理由で、彼女もこのアドバイスを受け入れざるをえなかったようだ。
 彼女は自分の考え方を自己憐憫から積極的なものに変えようと懸命に努力した。次第に、彼女の人生は変わっていった。それまではひどくむずかしく思えたことが、簡単にできるようになっていったのだ。たとえば、それまではダイエットするのがつらくて仕方がなかったのに、突然平気になった。彼女はからだをいたわることを考え始め、それまでのように大量の食料を詰め込まなくなった。だから体重が落ちたというわけだ。彼女は、前向きであるためのモットーを自分で考え出した。「自分の望みは、いずれはかなう。だから今日のところは、できる限りの最高な自分になること」そして難関にいき当たったときは、いつもこの言葉を繰り返すのだそうだ。
 見た目に明らかだったのは、ヴィッキーが体重を減らしたということだけではなかった。精神的な減量もまた、際だっていた。彼女は否定的な考え方という余分な体重を身につけていたようなものだった。それがいまや、負担がすべてそぎ落とされたのだ。
 ヴィッキーの生活すべてが向上した。幸せの絶頂だという。
 彼女は何か特定のものを求めて時を過ごしていたわけではない。とにかく最高のヴィッキーでいられるように意識を集中させていただけなのだ。
 私たちはみな、正しい思考習慣を持つことで、生活やそれを取り巻く周囲の人間に、大きな影響を与えることができる。そういった習慣は私たちとともにこの世を去り、よりスムーズに他界するための手助けとなってくれるのだ。

 「彼はその腹の内が示すとおりの人間だ」(箴言第二十三章七節)

 この言葉は、私たちの生活は思考によって大きく左右されるということを教えようとしたのだ。私たちは、現世と前世の思考を総合した存在だ。人間は、過去の思考パターンを持ってこの世に生まれ、それが現世における出来事の基本を形成している。私たちは、前世から肉体を一緒に持ち込むこともしなければ、銀行預金を持ち込むこともない。私たちが持ち込むのは、行為によって生み出されたカルマであり、その行為とは私たちの思考習慣に動機づけされたものなのだ。私たちの人間性は、私たちの思考の総合なのである。
 人間はこの世から持ち運んできた人間性とともに霊界に到着する。
 私はローレンスにこんな質問をしたことがある。「あの世へ移行するための準備としては、何がいちばん大切なのかしら?」
 彼の返事はこうだった。

 「正しい考え方をしながら人生を歩むことで、死への準備が整うんだ。
 死への準備は、寝るときの準備と同じだ。その2つには、ほとんど違いがない。寝ているときは、この世に目覚めるけど、死んだときは、あの世で目覚める。
 心地よい眠りを得るためには、怒りや否定的な心を解き放つ必要がある。自分に向けられた悪意も、すべて許してからでないと眠りについてはいけない。人生の喜びすべてに感謝しないうちに、眠りにつくのもいけない。寝る前は、自分の思考に目を向け、美しいものごとに意識を合わせるんだ。そうすれば、目覚めがさわやかなことは請け合いだ。寝ているあいだ、思考は力強く活動している。そしてその力は、目覚めてる時間に、より強くなっていくんだ。
 心穏やかに眠れる人間は、心穏やかに死ねるはずだ。
 すべては、きみの考え方ひとつなんだよ」
 
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