輪廻転生
驚くべき現代の神話
J・L・ホイットソン/J・フィッシャー・著
片桐すみ子・訳 人文書院
 
第4章 生と生のはざま
H

 つぎの人生を計画する

 ホイットン博士の研究でもっとも注目すべき点は、肉体に宿っていない状態のあいだに、多くの人々がつぎの人生を計画する事実がわかったことである。回顧の過程で探り出した自己に対する認識をもとに、魂はつぎの転生をどのようにするかを決める、きわめて重要な決断を下す。しかし魂はひとりで意志決定をするわけではない。決断するときには、裁判官たちの存在が大いにものをいう。裁判官たちは、魂にはどのようなカルマの負債があるのか、またどんな点を学ぶ必要があるのかをふまえて幅広い助言を与える。キリスト教の伝承によればイエス・キリストは、肉体をそなえた存在としては唯一の、両親を選択する特権を持つ者とされている。ところが、選択の道は万人に開かれており、来るべき人生を設定したり方向を定めたりするうえで、両親の選択が非常に重要だということがわかったのである。古代チベット人はこの来世を選ぶ手続きをちゃんと知っていた。
 『バルド・ソドル』は肉体を去った魂に、「……汝の生まれんとする場所を調べよ、肉体を選択せよ」と助言している。
 魂の望むものではなく、魂が必要とするものに応じて、裁判官たちは魂に忠告を行なう。だから、たとえ魂がいかなる代償を払ってでも一心に成長を追い求めるつもりがなければ、その忠告は複雑な感情とともに受け取られる傾向がある。ある女性はこう語る。

 私はどんな困難が人生の途上に生じてもそれに直面できるよう、つぎの人生を計画するのを助けてもらっています。弱い人間なので責任を回避することばかり考えていますが、障害をのりこえるための障害を与えられるべきだとわかっています――もっと強く、もっと意識を高め、より進歩してさらに責任を果たせるように。

 進歩の代償はつねに試練と困難である。魂が成長するにつれ、人生が次第につらいものになっていくのは、まさにこのためなのである。幾多の生涯を通じてきずなを作り上げてきた他の魂と相談して、つぎの人生の計画を決定することがよくある。つまり誕生の時と場所の選択が非常な重要性を帯びるわけだ。選択をあやまれば、みのりある再会のチャンスを逸してしまうことになる。
 グループ転生とは同じ魂たちが組になって、さまざまな人生においてたえず変化する関係を通じて発展していくことだが、ホイットン博士の被験者によれば、このグループ転生はひんぱんにくり返されているという。「カルマの台本」では、関係のよしあしにかかわらず、前世に登場した人とふたたび新しくかかわることが要求される。自分が人に対して償いをせずにはいられないと思ったある人物は。

 前世で十分な扱いをしてやらなかった人がいるので、またこの世に戻って借りを返さなくてはなりません。こんど彼らが私を傷つける番になっても、許してやるつもりです。また故郷へ戻りたい一心だからなのです。ここが故郷なんですから。

と語っている。
 「魂の友」ときくと、互いの成長のため何度も目的をもって転生をともにしてきた魂を連想するかもしれない。ところが、一緒にいてけっして楽しくはない相手と再会することによって成長する場合のほうが多いのである。
 「いやだ……あの女なんかもう二度とごめんだ!」ある被験者はうめいた。彼は前世で自分が殺した女性のもとに生まれ変わるのがいちばん成長に役立つ、と言われたのだった。
 自分のカルマにふさわしい状況に身を置くため、欠陥のある身体を選択するよう助言された被験者も何人かいる。大きく進歩するためには逆境を受け入れなくてはならないこともあるのだ。ある女性はこう報告している。

 私はその人がアルツハイマー型老人痴呆症の発病率が高い家系の出で、自分も同じ病にかかる可能性が高くなると知りながら、母親として選びました。母とのカルマのつながりはどんな遺伝学上の欠陥よりも重要だったからです。母を選んだのにはもうひとつわけがあります。裁判官たちが私に、今生では父親なしで育てられる体験を味わうべきだと言ったのです。両親がそのうち離婚するだろうということは感づいていました。この両親を選んだことで、結婚相手となるべき男性と会うのに理想的な立地条件におかれることも知っていたのです。

 計画はかならずしもこのように決まった条件のもとに遂行されるとは限らない。未発達の人格ほどくわしい設計図を必要とするようだが、発達した魂になると大体のアウトラインだけをつくり、むずかしい状況に身を置いて、より創造的な活動をしていくようにみえる。何回かの人生で鬱々と暗い生活をおくったある男性は、自分の発達のためにつぎの転生では、華やかなラブロマンスに身を投ずるのがいいと考えた。彼が計画したのは多情な女になるという大筋だけで、基本となる性別と態度だけを決めておき、あとの未来のできごとはくわしく決めなかった。つぎの人生の計画をたてながら、彼はこんなイメージを描いた。

 ……時計仕掛けの機械のようなものがありますね、一定時間がたつと作動を開始する部品をとりつけられるようになった……。思うに私は自分の変えたいところを調整していたんではないでしょうか。機械に細工して、中間世での計画にあわせて将来私の人生に変化がおきるよう、しかるべく調整して変換スイッチをセットしたわけです。

 この被験者は前世から知りあっていた、「はっきりと人間の形をしていない」存在に気づいていた。彼のつぎの人生に登場して大きな役割を果たすことになっているひとりの人物が、半身バラの花で半身はコブラという象徴的な姿をしてあらわれたのである。このシンボルの意味を問われて被験者が答えるには、その人のコブラの側面とは、その人物が過去に二度までも彼を殺してきた張本人であったことをあらわし、バラは数回の人生にわたってこの二人を結びつけてきた愛の本質をあらわすものだという。
 
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