輪廻転生
驚くべき現代の神話
J・L・ホイットソン/J・フィッシャー・著
片桐すみ子・訳 人文書院
 
第4章 生と生のはざま
I

 自分の計画を知ってがっかりする場合もある。タクシー会社の配車係をしているある女性は感情的な問題と劣等感にひどく苦しんでいたが、自分の中間世での計画を思い出せば、今生で自分は何か偉業をなしとげる運命にあることがわかる、と考えた。ところが超意識からわかったのは、彼女の今生の目的は他の人々とのあいだの感情的な問題を克服するのを学ぶことにすぎない、ということだった。現在の劣等感は彼女が前世でとった偉そうな態度の代償なのだった。自分のカルマの台本の進行状態があまりにも遅々としたものなのを知って驚いた彼女は、落胆のあまり抗うつ剤を処方してもらわねばならない始末だった。苦しくはあったが、この個人的な計画を知ったことで、彼女は結局自分の設定した任務を遂行することができたのである。
 大きな困難を克服するのに何回も失敗した人々は、その難題をきちんと果たすまで、おなじ状況に身を置くよう裁判官たちに促されたという。自殺した人は、中間世で不安感にとらわれることがよくある。彼らは自分たちが未熟のままこの世に別れをつげる原因となった苦しみの段階に、また戻らなければならないと知っているのだ。ある被験者は栄養学の博士号をとるため勉強中だったが、その前世を調べたところ、過去二千年ものあいだずっと孤独に耐えることができないでいた。今生でもこの女性は自分の息子に過度に頼るようになり、息子が大学に入るので家を出たときには神経衰弱の一歩手前までいった。超意識からわかったことは、またもや彼女は自分の課したテストに失敗したので、この弱さを征服することを学ぶまで同じような状況をつくりだしつづけねばならない、ということだった。
 この世での人生が進行中であっても、計画をすっかり変更することができる。スティーヴ・ローガンという被験者がその一例である。彼は若いころ父を極端に毛嫌いしており、父の病が重いというのにめったにマイアミの老人ホームを訪問してやらなかった。だがあるとき、何となく父のことが気になって父を訪ねていった。老人ホームに着くと、父は重体で各種の生命維持装置につながれていた。まくらもとに立ったスティーヴがみたのは、人工呼吸装置のチューブが外れて息ができず苦しんでいる父の姿だった。この状況に置かれて、スティーヴはジレンマにおちいった。命を助けるために看護婦を呼ぶこともできるが、見てみぬふりをして父を死なせることもできる。一瞬思案したが、彼は大声で看護婦を呼びながら部屋をとびだし、看護婦は無事チューブをもとの位置にもどしたのだった。
 何年かのち29歳になったスティーヴは、オレゴン州のちいさな町で自転車に乗っていて、ひどい事故にあった。横からトラックにはねられたのだが、好運にも大腿骨骨折はまぬがれた。彼は40歳のはじめに超意識につれられていってはじめて、これらの二つのできごとが自分の中間世で計画されたものだと知った。彼はこう報告している。

 父の生死を決めたあの事件は、あきらかに私が自分で計画した重要な試練で、そのことは私のカルマの台本にはっきりと書かれていました。もし私に対して父が犯した罪――何回もの人生にわたるものらしい――を許してやれたら、私は自転車事故で死なずにすむことになっていたのです。計画では、私の過去の行為のために、父を死なせようとすることになっていました。でも私はテストにパスし、事故ののち、その計画は終了したのです。来世にわたる未完成の計画が繰り上げられて今生で起こったことがわかりました。
 
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