輪廻転生
驚くべき現代の神話
J・L・ホイットソン/J・フィッシャー・著
片桐すみ子・訳 人文書院
 
第14章 生と生のはざまの意味するもの
A

 ホイットン博士の患者たちの証言が私たちを連れていってくれるのは、ほんのそこまでにすぎない。案内者、裁判、計画をたてる過程などの、中間世の諸要素を知ることが、その第一歩である。つぎに、それらの働きとこの世の人生に対して与える影響とを、しっかり探究していかなければならない。研究がすすむにつれ、優勢を誇っている合理主義的・物質主義的な正統派医学も、新しい次元に眼を開いていかざるを得ないにちがいない。アメリカ医学界の重鎮、スタンリー・R・ディーン博士は、この新しい次元と既存の精神医学との統合をめざして、「メタ精神医学(metapsychiatry」という新語を造りだした。『精神医学と神秘主義』で博士はこう述べている。

 「メタ精神医学は、きわめて学際的なもので、超心理学・哲学・宗教・経験論理学と相互に依存する関係にあり、これらの補完しあう要素が単独では生み出し得ない成果をあげうる学問である。」

 長らく肉体の治療と心の治療とは、別の学問分野だと考えられてきたが、前世療法の登場で、全体的なアプローチがふたたびかつての地位をとりもどすきざしが見えてきた。『医学における心』でイギリスの精神科医アーサー・ガーダムはつぎのように述べている。

 「……現在人類は心霊面での理解を深めつつあるが、それにつれて医学における宇宙的な要素もますます広く認識されていくだろう……。現代医学はこれまで叡知に背を向け続けてきた。叡知が、いわゆる科学的側面からでも宗教的側面からでもなく、ものごとを統一体として見る、偉大な賢人や哲学者たちの理解するものだったからである。現代医学の光のとどかない陰の部分に、真理の光をあてて照らしださせることを容認すべく、我々は求められている。」

 魂の活力の根源は中間世に見いだされるはずであるから、超意識が治療技術などの学問分野をさらに深く開拓しうることは十分考えられる。心の内奥の自己と接触し、魂が肉体を離れた状態の特徴であるところの宇宙の秩序との調和を感じる人々が増加するにつれ、心理療法は大きく前進をとげようとしている。別のリアリティーの存在を知るだけで、人生はすっかり変わってしまう。安心立命を手中にした私たちは、この世にいる間、たじろいだり心配したりする必要は少しもない。もし心配があるなら、誤りの原因は、この世のリアリティーと格闘するうちに、真理をとらえる視力を保持できなくなってしまうことにある。
 もっとも重要なのは、中間世を知ることでひとりひとりの責任が非常に大きくなることだ。この世は中間世で計画したことが試される場所だ、と認めるなら、毎日の生活は新たな意味と目的に満ちたものとなる。そして、たとえこの世の環境がどんなに困難であっても、短い生を終えたとき人間は、愛の根源の美と雄大さのうちに包みこまれる。バルドこそが私たちの住むべき世界で、地球という惑星は魂の進化のために必要な試験場であるにすぎない。
 これまでに多くの成果があがってはいるものの、いまだに生と生のはざまは、真価を知られぬまま地下に埋もれている資源のようなものである。広範囲にわたる調査研究を行ないさえすれば、あの世の秘密がさらに詳しくわかるだろうし、それを人間の進歩に役立てることもできよう。本書は、生と生のはざまを探険した最初の記録である。科学者たちが中間世へとさらに深く入りこんでいけば、私たちが死後肉体を離れてからどのような運命をたどるのか、将来もっとよくわかってくるはずだ。超意識の研究には誕生と死の障壁を乗り越える可能性がありながら、人間の置かれた状況に大きく関連づけて考えることがほとんどできなかった。私たちがここにいるのはなぜなのか、また何をしなければならないのか――超意識の研究は、私たちにそのことを理解させずにはおかない。
 
← [BACK]          [NEXT]→
 [TOP]