「完全栄養」に“洗脳”された日本人
『
牛乳のワナ』という本を書き上げた。
この書名だけでは、何のことか、訳のわからない方も多いだろう。
それも、無理もない。牛乳と聞けば、だれでも「完全な栄養飲料」「カルシウムの宝庫」「骨折を防ぐ」「子どもが大きく育つ」……などの言葉が思い浮かぶはずだ。
牛乳は、現代人にとって、もっとも理想の栄養源としてとらえられてきた。
わたしの子どもの頃は、牛乳配達も多かった。当時、けっして牛乳は安価ではなかった。それでも各戸で需要があった。いかに、牛乳は大衆が憧れる“完全栄養飲料”であったかがわかる。
学校給食でも細長いコッペパンと牛乳がアルミの器で登場した。さらに、思い出すのはパンに添えられていたマーガリンだ。鷹印のブランド名まで覚えている。
パンは子ども心にも美味しくはなかった。さらに不味かったのがミルクだ。別名、脱脂粉乳。脱脂とは何か? 後で知ったが、つまりは、牛乳からバターを製造した後の、残り滓(かす)をわれわれ子どもたちは給食で無理やり飲まされていた、というわけである。
この「給食に牛乳を出す」……という発想は、いまだに続いている。
保育園でも小中学校でも、さらには病院でも、牛乳は給食に絶対に不可欠である。
驚いたことに老人施設でも毎日、牛乳は出される。
なぜ……? と聞けば、介護職の方は、胸を張って答えるだろう。
「お年寄りの骨折を防ぐためですよ」
さらに、忘れてはいけないのは粉ミルクだ。
戦後、日本政府は母子手帳などで、乳児に粉ミルク――つまり、牛の乳を飲ませることを国家権力によって“強制”してきた。
こうして、赤ん坊からお年寄りまで、戦後日本人は“牛乳漬け”にされてきたのだ。
いったい、誰によって……?