古代霊は語る
シルバー・バーチ霊訓より
近藤千雄・訳編 潮文社 
第2章 絶対不変の法則 ― 因果律 ―

 自然災害や事故で命を失うことの不公平は

問 魂の進化は常に肉体の進化と同時に進行してきたのでしょうか。
シルバー・バーチ
 同時ではありません。人間の霊魂が宿れるようになるまで肉体はそれ独自の進化を辿る必要がありました。

問 死後も向上進化があるとすれば、反対に邪悪な心を起こして堕落する可能性もありうるわけですか。
シルバー・バーチ
 ありますとも! 霊界へ来て何十年たっても何百年たっても地上時代の物的欲望が抜け切らない者が大勢います。神の摂理を理解しようとしないのです。

問 なぜ神は地震や火山噴火などを未然に防いでくれないのでしょうか。
シルバー・バーチ
 あなた方が「なぜ神は」と不服を言う時、それは自然法則の働きに対して文句を言っていることを忘れないで下さい。私は霊的な自然法則をありのままにお教えし、それに私自身の体験をまじえてお話しているのです。地震というのは地球の進化の過程における一種の浄化現象です。地球はまだまだ完成の域にはほど遠いのです。

問 その浄化活動のために何十人もの人間が犠牲になるのは不公平だと思うのですが……
シルバー・バーチ
 死ぬということは決して不幸でも災難でもありません。私から観れば、魂が肉体の牢獄から解放される祝福すべき出来ごとです。

問 そうした災害で死亡する人は、その時期に死ぬべき人だったということでしょうか。
シルバー・バーチ
 その通りです。前世の因縁によってそこに居合わせたということです。

問 地上の人間より進化した人類の住む天体がほかにありますか。
シルバー・バーチ
 ありますとも! あなた方よりはるかに進化した人類の住む天体はいくらでもあります。地球という惑星は広大な宇宙の中の無数の惑星の一つにすぎません。しかも地球より程度の低い惑星はたった一つしかありません。

問 生まれたばかりの子供が事故や殺人などで他界した場合、人間としてこの世に生を享けた意味がないのではないでしょうか。
シルバー・バーチ
 永遠なる生命を束の間の物的尺度で判断しているかぎり、そうした問題を正しく理解することは出来ません。人間の理解力にはおのずと限界があります。いかなる聡明叡智の人でも所詮は完全に地上的知識の範囲を超えることはできません。地上生活を終えて霊的知識の光で物事を見た時、それまで到底理解の及ばなかった深遠なる神の配慮があることをはじめて知ることになります。地上生活を送っている間は、すすけたガラス越しに見ているようなものです。物事の真相を知ることはとても不可能なのです。目前の現象だけで永遠の生命を判断しようとするのは、小学校時代の成績だけでその人の全生涯を判断しようとするようなもので。とんでもない話です。中学、高校、大学と進み、そして社会人となってから、それまで夢想だにしなかった体験を無数に積み重ねていくように、地上生活を終えて霊界に来てから霊的進化を遂げるにつれて、それまで夢想だにしなかった素晴らしい世界を見るようになります。そして地上で叶えられなかった数々の望みが叶えられます。その段階に至るまで、神に文句を言ってはいけません。

 ここでシルバー・バーチが言っていることはシルバー・バーチ霊言集の、というよりシルバー・バーチ自身の、人間界に対する具体的な姿勢をよく表わしているように思われます。
 つまりシルバー・バーチは人間が肉体に宿っているかぎり、どう努力してみたところで、所詮、宇宙の真相を知りつくすことはできない。小学校の秀才も中学、高校、大学の勉強は所詮歯が立たない。だから小学生は小学生なりの勉強をしておればよろしい。それ以上のことは上の学校へ行けば段々に習うのだから、というわけです。だからシルバー・バーチ霊言集は、全11冊を通じて、平易な真理を繰り返し繰り返し説くことに終始しております。
 私もこうした考え方に全面的に賛成です。だからこそ四半世紀にわたって愛読してきたわけです。こうした考えは決して人間はつまらんと言っているのではなく、人間はあくまでも人間らしくという、いわば人間味を要求しているのです。
 霊能者と呼ばれる特殊な人を除いて、人間は基本的には五感によって生活するように出来ています。だから、その範囲でつつましく生活するのが人間にとって一ばんいいのです。高僧がその五感の壁をつき破って豁然大悟したといっても、高級神霊界からみれば、すすけたガラス越しに見たにすぎない。それもホンの幽界の上層部、せいぜい霊界の入口あたりを垣間見たにすぎないようです。その辺なら死ねば誰だってすぐに行けるところなのです。
 浅野氏は人間味というものを大切にされましたが、「人間はいい加減ということが一ばん大事じゃ」という言葉をよく口にされたことも、私の師の間部先生から聞かされました。ムキになって完璧を求めても、それは地上では所詮ムリだ、という意味なのです。
 とは言え、人間には抑えがたい向学心や知識欲もあります。難しい高等数学なんか要らない、オツリの計算が出来れば結構というのも一つの理屈ですが、その理屈だけでは気がすまないのも人間です。一見実生活に関係ないようでも、やはり高等数学や物理学は人間の向学心や知識欲が自然に要求するものであり、そこに理屈はありません。
 
← [BACK]          [NEXT]→
 [TOP]