古代霊は語る
シルバー・バーチ霊訓より
近藤千雄・訳編 潮文社 
第5章 死後の世界

 (前半部分は割愛しました――なわ)

 霊の世界に関するシルバー・バーチの説明

 ……では最後にシルバー・バーチに死後の世界と生活ぶり、そしてこの世とのかかわり合いについて語ってもらいましょう。

 私たちが住む霊の世界をよく知っていただけば、私たちをして、こうして地上へ降りて来る気にさせるものは、あなた方のためを思う気持以外の何ものでもないことがわかっていただけるはずです。素晴らしい光の世界から暗く重苦しい地上へ、一体誰が、ダテや酔狂で降りてまいりましょう。
 あなたがたはまだ霊の世界のよろこびを知りません。肉体の牢獄から解放され、痛みも苦しみもない、行きたいと思えばどこへでも行ける、考えたことがすぐに形をもって眼前に現われる、追求したいことにいくらでも専念できる、お金の心配がない、こうした世界は地上の生活の中には譬えるものが見当らないのです。その楽しさは、あなたがたにはわかっていただけません。
 肉体に閉じ込められた者には美しさの本当の姿を見ることが出来ません。霊の世界の光、色、景色、木々、小鳥、小川、渓流、山、花、こうしたものがいかに美しいか、あなたがたはご存知ない。そして、なお、死を恐れる。
 人間にとって死は恐怖の最たるもののようです。が実は人間は死んではじめて真に生きることになるのです。あなたがたは自分では立派に生きているつもりでしょうが、私から見れば半ば死んでいるのも同然です。霊的な真実については死人も同然です。なるほど小さな生命の灯が粗末な肉体の中でチラチラと輝いてはいますが、霊的なことには一向に反応を示さない。ただし、徐々にではあっても成長はしています。霊的なエネルギーが物質界に少しずつ勢力を伸ばしつつあります。霊的な光が広がれば当然暗やみが後退していきます。
 霊の世界は人間の言葉では表現のしようがありません。譬えるものが地上に見出せないのです。あなたがたが「死んだ」といって片づけている者の方が実は生命の実相についてはるかに多くを知っております。
 この世界に来て芸術家は地上で求めていた夢をことごとく実現させることが出来ます。画家も詩人も思い通りのことが出来ます。天才を存分に発揮することが出来ます。地上の抑圧からきれいに解放され、天賦の才能が他人のために使用されるようになるのです。インスピレーションなどという仰々しい用語を用いなくても、心に思うことがすなわち霊の言語であり、それが電光石火の速さで表現されるのです。
 金銭の心配がありません。生存競争というものがないのです。弱者がいじめられることもありません。霊界の強者とは弱者に救いの手を差しのべる力があるという意味だからです。失業などというものもありません。スラム街もありません。利己主義もありません。宗派もありません。経典もありません。あるのは神の摂理だけです。それが全てです。
 地球へ近づくにつれて霊は思うことが表現できなくなります。正直言って私は地上に戻るのはイヤなのです。なのにこうして戻って来るのはそう約束したからであり、地上の啓蒙のために少しでも役立ちたいという気持があるからです。そして、それを支援してくれるあなたがたの、私への思慕の念が、せめてもの慰めとなっております。
 死ぬということは決して悲劇ではありません。今その地上で生きていることこそ悲劇です。神の庭が利己主義と強欲という名の雑草で足の踏み場もなくなっている状態こそ悲劇です。
 死ぬということは肉体という牢獄に閉じ込められていた霊が自由になることです。苦しみから解き放たれて霊本来の姿に戻ることが、はたして悲劇でしょうか。天上の色彩を見、言語で説明のしようのない天上の音楽を聞けるようになることが悲劇でしょうか。痛むということを知らない身体で、一瞬のうちに世界を駈けめぐり、霊の世界の美しさを満喫できるようになることを。あなたがたは悲劇と呼ぶのですか。
 地上のいかなる天才画家といえども、霊の世界の美しさの一端なりとも地上の絵具では表現できないでしょう。いかなる音楽の天才といえども、天上の音楽の旋律のひと節たりとも表現できないでしょう。いかなる名文家といえども、天上の美を地上の言語で綴ることは出来ないでしょう。そのうちあなたがたもこちらの世界へ来られます。そしてその素晴らしさに驚嘆されるでしょう。
 いま地球はまさに五月。木々は新緑にかがやき、花の香がただよい、大自然の恵みがいっぱいです。あなたがたは造花の美を見て「何とすばらしいこと!」と感嘆します。
 がその美しさも、霊の世界の美しさに比べれば至ってお粗末な、色あせた模作ていどしかありません。地上の誰一人見たことのないような花があり色彩があります。そのほか小鳥もおれば植物もあり、小川もあり、山もありますが、どれ一つとっても、地上のそれとは比較にならないほどきれいです。そのうちあなたがたもその美しさをじっくりと味わえる日が来ます。その時あなたはいわゆる幽霊となっているわけですが、その幽霊になった時こそ真の意味で生きているのです。
 実は今でもあなたがたは毎夜のように霊の世界を訪れているのです。ただ思い出せないだけです。それは、死んでこちらへ来た時のための準備なのです。その準備なしにいきなり来るとショックを受けるからです。来てみると、一度来たことがあるのを思い出します。肉体の束縛から解放されると、睡眠中に垣間見ていたものを全意識をもって見ることが出来ます。そのときすべての記憶がよみがえります。
 
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