日本国民に告ぐ
誇りなき国家は、滅亡する
小室直樹・著 ワック出版 
第1章 誇りなき国家は滅亡する

 「組織化された偽善」

 こうした、史実さえ確認しない謝罪外交がピークに達したのが、平成7年の夏に繰り広げられた。“謝罪祭り”である。この戦後50周年の夏、日本は歴史に残る大失敗をした。半世紀以上も前の戦争を「侵略」であると認め、世界中に「謝罪」してしまったのだ。大東亜戦争は「侵略」ではないから、日本国は「謝罪」しないと主張した政治家は一人としてなく、そう論じた新聞は一紙としてなかった。後世の史家の嘆くまいことか。
 細川内閣から、日本政府は何かと言われると(いや、何も言われなくても)、すぐに謝るクセがついてしまった。条件反射的にペコリとする「謝り人形」になってしまった。日本は侵略したから謝ります。日本の歴史は罪の歴史である、日本は過去に悪いことばかりしてきた、だから何がなんでも謝ってしまえ……。
 この無条件謝罪主義が極限に達したのが村山内閣である。村山首相は、平成7年8月15日午前、首相官邸で記者会見し、「戦後50年に当たっての首相談話」を発表。
 先の戦争(大東亜戦争)は、わが国が「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジアの諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えた」侵略戦争であると断定。そして、「痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします」と謝罪した。
 閣僚ばかりではない。政党も、与野党こぞって「侵略」「謝罪」「反省」のオンパレードだった。
 日本は侵略戦争をしたから謝罪すると、政府、政党の大合唱。ディズレイリ(19世紀の英国の大政治家)の言葉、「組織化された偽善」を思い出すではないか。この組織化された偽善のもと、平成7年6月9日、衆議院本会議でいわゆる戦後50年国会決議が採択され、日本は「植民地支配と侵略的行為」を世界中に謝罪したのである。
 
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