日本国民に告ぐ
誇りなき国家は、滅亡する
小室直樹・著 ワック出版 
第1章 誇りなき国家は滅亡する

 実証的検証を怠り暗黒裁判を行う日本のマスコミ

 問題は反対言論の封殺だけにあるのではない。さらに重要なことは、大マスコミの態度にある。いわく、
「より決定的なことは、数千万の人々の認識を左右する力を持つ、大マスコミ(新聞、テレビ)が、一貫してこの問題の実証的な検証を怠り、反対言論を封殺しているからである」(藤岡信勝「反日史観はこうしてつくられる」――『サンサーラ』平成8年11月号)
 日本のマスコミが実証的検証を怠っている! これ、マスコミの自殺ではないか。マスコミであるための最低限の資格は、もちろん実証的検証である。書くことは真実でなければならない。そうではなくて、嘘でも本当でも何でも書き放題というのでは――。それはもう「マスコミ」とも「ジャーナリズム」とも言える代物ではない。断じて。日本のマスコミは、ここまで転墜(てんつい)したのであった。藤岡教授は、はしなくも、この重大事実を発見した。
 日本のマスコミは、なぜ、ここまで泥にまみれきったのか。反対言論を封殺するためである。何がなんでも、反対言論は封殺しなければならない――日本のマスコミは、反対言論を目指して放列を敷いた。これほどまでのマスコミ言論の統一は、まさに、ゲッペルス賞ものである。ナチス・ドイツのゲッペルス宣伝大臣は嘆じて言うであろう。
「余はドイツ・マスコミを制御して統一するために苦心を重ねたが、ついに、これほどの統制はできなかった。日本マスコミは、いったい誰の統制によって、これほどまでの統一が可能になったのか」と。
 藤岡教授は論断する。
「たとえば、自民党の奥野誠亮元法務大臣が『慰安婦は商行為ではないか』というごく当たり前のことを述べたのに対する朝日新聞の報道は、本当に『商行為』であったのかどうかという事実の検証ではなく、そういうことを言うこと自体をアジアの女性を侮辱するものだとして断罪するというシロモノである」(藤岡信勝「反日史観はこうしてつくられる」――『サンサーラ』平成8年11月号)
 すなわち、「その被疑者のために弁護するのは、けしからん」というのであるから、これは弁護士なき裁判、つまり暗黒裁判である。
 テレビに登場するキャスターは、奥野氏らの発言のたびに『言語道断』という素振りで顔をしかめてみせる」(同上)
 まさに問答無用の言論封殺である。暗黒裁判、問答無用の言論封殺――それが、今や、日本マスコミの正体。日本マスコミは、実証的検証を捨て去ること、泥のごとし。
 
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