日本国民に告ぐ
誇りなき国家は、滅亡する
小室直樹・著 ワック出版 
第1章 誇りなき国家は滅亡する

 「空気」こそが日本教の教義

「従軍慰安婦」問題は根も葉もない作り話である。
「ところが、真に驚愕すべきことに、多くの日本人がこの荒唐無稽な話をどうやら、多かれ少なかれ、信じているらしいのである」(藤岡前掲論文)
 日本は「空気」支配の国である。空気こそが“日本教の教義”である。空気に反したことをしただけで許すべからざる「犯罪」とされる。反日史観が全日本に瀰漫し、空気とまでなったのだから万事休す。論じること自体がタブーとなった。
「少しでも慰安婦問題に疑念を呈する発言をした政治家には洪水のように集中的な、抗議文、脅迫状、が舞い込む仕掛けになっている」(同右)
 まるでカルト教団そっくりのやり口である。誰かの計画か。日本人はマインド・コントロールによってカルト教団になったのか。
 占領軍は去ったが、占領軍によるマインド・コントロールは残った。伝統主義の柵にしっかり守られて、今度は日本人自身が、占領軍がやったのと同型のマインド・コントロールをやるようになったのである。マインド・コントロールの仕組みが、しっかりと社会に根を張ったのである。なぜ、かくも恐ろしきマインド・コントロールが日本社会に根づいたのか。その理由については後に論ずる。ここでは、カルト教団を髣髴させる(そっくりの)マインド・コントロールが日本で作動している。このことを銘記しておきたい。
 集中的な抗議文、脅迫状! 「議論には議論を」「意見には反対意見を」、このルールへの箍(たが)は外されっぱなしである。言論の自由は地を掃(はら)った。たとえば、
「参議院自民党の板垣正議員のところへ来たこの種の文書・電話は8,000件、衆議院の奥野代議士のもとへはその倍の数の脅迫と抗議が来ているという」(同上)
 この言論弾圧のパターン。カルト教団のそれと同型であることはすでに強調した。反対意見は許さない。何がなんでも、マインド・コントロール(洗脳)してしまえ。いや、占領軍のマインド・コントロールとも同型である。占領後の「進歩的文化人」によるマインド・コントロールとも同型なのである。
 1979年、ソ連軍が突如としてアフガンに侵入する前の時代、日本のマスコミは、少なくとも反・反共でないと寄せつけなかった。それどころではない。少しでも、ソ連、中共に不利な言葉を吐けば、たちどころに、抗議、脅迫の嵐。こんなことさえあった。中国のかの「経済大躍進」のとき、毛沢東は、農民の自宅の庭に素朴な溶鉱炉を置いて鉄を作らせたのであった。ある技師はこれを批判して、あんなことで使用可能な鉄ができるわけがないと言った。そうするとどうか。抗議、脅迫の洪水。この技師、ノイローゼになり、それが高じて死んだ。
 
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