日本国民に告ぐ
誇りなき国家は、滅亡する
小室直樹・著 ワック出版 
第5章 日本国民に告ぐ

 なぜ「大東亜戦争」と言わなくなったか

 日本人がいともたやすく洗脳された最大かつ第一の理由は、GHQによる巧妙な検閲である。いや、私は別に洗脳などされていない、と反発される読者もいるかもしれない。
 しかし、たとえば「大東亜戦争」という言葉についてはどうだろう。この言葉を聞いただけで、何か日本が悪いことをしたかのようなイメージを持つ方もいるのではないか。先般、『大東亜戦争ここに甦る』(クレスト社)という書名の著書を書き下ろした。「先の大戦」について書かれた本はあまた出版されているが、そのほとんどが太平洋戦争と呼称している。教科書の記述もそうだ。
 しかし、日本の小・中学校で「太平洋戦争」と教育するのは明らかに不当である。なぜなら、「先の大戦」では、インパール(インド北東部)やインド洋でも戦ったからである。特に、インド洋作戦の成否は、「大東亜戦争」の戦局を決する死活的に重要な作戦であった(前掲拙著参照)。これらの戦闘を除外し、「太平洋戦争」と呼称したのはアメリカ軍である。なぜなら、インパール作戦とインド洋作戦の主敵はイギリス軍だったからだ。
 少なくとも、日本では「大東亜戦争」と呼称していた。それが戦後、「太平洋戦争」と呼称されるようになったのはなぜか。日本が戦争に敗れ、アメリカ軍に占領されたからである。GHQが、昭和20年12月15日の「神道指令」で「大東亜戦争」という用語の使用自体を禁止したからである。
 この命令に基づくGHQの検閲によって、「大東亜戦争」はすべて「太平洋戦争」に書き替えさせられた。「太平洋戦争史観」「東京裁判史観」の始まりである。
 
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