日本国民に告ぐ
誇りなき国家は、滅亡する
小室直樹・著 ワック出版 
第5章 日本国民に告ぐ

 なぜ、大東亜戦争に感謝するアジアの声を伝えないのか

 以上、いかにして、侵略戦争史観、自虐史観が日本人に植え付けられたかを見てきた。
 そもそも、あの戦争は“侵略”なのか――。
 多くのアジアの人びとは、そうは思っていない。これについては、まとめて詳論するだけの分量があるので、筆硯(ひつけん)を新たにして論じたい。ここでは、特に目立つ例をいくつか挙げて注意を喚起しておきたい。
 たとえば、タイの元副首相・元外相タナット・コーマン氏は言う。
「あの戦争によって、世界のいたるところで植民地支配が打破されました。そしてこれは、日本が勇戦してくれたお陰です。新しい独立国が、多く火の中から不死鳥のように姿を現わしました。誰に感謝を捧げるべきかは、あまりにも明白です」(航空自衛隊連合幹部会機関誌「翼」平成7年新秋号)
 まさにそのとおり。半主権国・半独立国がなくなって、すべての国が独立・平等な主権国家とされるようになったのは、大東亜戦争の結果である。彼は、日本が大東亜戦争で勇戦したことに深く感謝しているのである。
 また、マレーシア・マラヤ大学のサイド・フセイン・アラタス副学長も言う。
「先の戦争にあたって、日本の皆様が私たちの独立を大きく助けてくださいました。日本の皆様がしてくださった最も重要なことは、東南アジアの人びとに初めて『自信』というものをもたらしたということです」(同右)
 日本軍は、アジア人の目の前で白人の軍隊を撃滅し降伏させることによって、それまで白人の支配に甘んじていた多くの黄色人種国家に「自信」をもたらしたのであった。
 その例を挙げれば、「事実、大東亜戦争はインドの解放を願った独立戦士にとっては天の賜であった」(シシル・ボース。インドのネタジ記念館館長。チャンドラ・ホースの甥。同右)。
 なぜ、天の賜なのか。それは日本が英国に勝つたからである。彼はつづけて、「戦争初期の日本軍の輝かしい軍事的勝利は、暴虐野卑な英国の支配に喘いでいた何百万のインド人に歓喜と勇気をもたらしたのである」(同右)と述べる。
 また、サイデマン・スリヨハディプロジョ氏(インドネシア外務省上級大使)は「多くの日本の青年たちが、インドネシアを自由にするために独立の闘士たちと肩を並べて戦ってくれました。そして多くの日本の若者たちが、そのために命を犠牲にしてくれました」(同右)。
 実際、戦前のインドネシアは、独自の宗教、教育をはじめとして民族のアイデンティティーすら持ちえなかった。オランダ人は、インドネシア人のイスラム教信仰すら強制的に分断して、一つのまとまった宗教として成立させなかった。当時の彼らには、宗教の「自由」を手にする方法すらなかった。いわんや教育においてをや。そんな国家に、日本は、宗教・教育をまとめあげ、軍隊を作り、独立のための準備を整えたのであった。
 大東亜戦争に心から感謝している人びとも、このように多い。
 だが、日本の政府、役人、一般大衆は、このことをほとんど知らない。それは、大新聞をはじめとする日本のマスコミに、今もGHQの呪縛である「自己検閲」が働いており、彼らはこういった重要な証言を、まったく報道しないからである。彼らは、依然として「日本は侵略してアジアの人びとに迷惑をかけた」としか言わない。こんな有り様だから、当時の現実を知らないアジアの若い人びとの中には、「日本はそんなに悪いことばかりしたのか」と、反日的な人が急増している。まことに嘆かわしいことではないか。
 大東亜戦争を体験したか直接に見聞きした人びとは、今や老人である。正しいデー夕を確実に集めておくことは、日本の国益上、急務であろう。
 
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