地球の支配者は
爬虫類人的異星人である
太田龍・著 成甲書房 
1 西洋文明は自然を破壊し人類を滅亡へ導く

 西洋の暗黒部分に気がつかない日本人

 福澤諭吉は単なる一介の洋学書生、一人の教育家、一人のジャーナリスト、啓蒙家などとはいえない。彼は明治年間に既に日本社会の一大勢力であったのみならず、彼の死去に際しては帝国議会が満場一致、生前の偉大な功績をたたえる追悼決議を可決した。つまり、それだけ福澤は日本にとっての公的人物であった。
 昭和前期の20年はともかくとして、戦後60余年、福津の思想はほとんど日本の国是、国定教義、主流中の主流と化した、といっても誇張ではない。それは何を意味するかというと、明治以来このかた、福澤に代表される日本はひたすら、西洋の“光”の部分、西洋の明るく輝いて見える部分のみを自国自民族の見本としてきた、ということである。
 もちろん、徐々に西洋を研究する学者作家ジャーナリストの層が厚くなるにつれて、西洋の闇の部分、暗黒の部分、さらにいえば、西洋の“真実”の部分、西洋を西洋たらしめているほんとうの部分に注目する知識人も、僅かではあっても、出てはきた。
 しかしそのような知的営為は系統的に、上からも下からも右からも左からも、神道界からも仏教界からも、民間からも官からも、ただちに排除される構造と仕組みが完璧に作られてしまった。
 こんなことを何十年も続けると、必然的に、エリート指導者層から庶民大衆に至るまで、日本人の西洋像は恐ろしく歪んだものにならざるをえない。
 つまり、明治期から今日まで、日本人は西洋がまったく分かっていない、西洋について何も見えていない、西洋を何一つ知らない、という状態である。
 これは実に恐るべき事態である。

 人類は、最大多数の人間の最大幸福を求めて行動し、そしていまや、最大多数のためのもっとも速やかなる無に到達しようとしている。
(ヘルベルト。グルール『収奪された地球』東京創元社、233頁)

 現代文明は、計画された自殺行為である。(G・R・テイラー)

 現在の生産システムは自己壊滅的である。人類文明がたどる現在のコースは自殺的である。    (B・コモナー)


 西洋を何一つ知らない日本人に、いきなり、こんなことばが飛び込んできた。
 ヘルベルト・グルールは、旧西ドイツ・キリスト教民主同盟の国会議員。同党の環境問題小委員会に属して地球環境問題を調査してゆくうちに、1950年代から1960年代、そして1970年代と、欧米のきわめて多数の学者が、このまま現代西洋工業文明が進めば、確実に、人類は滅亡するほかない、との警告を発していることを知った。
 そして1976年、前掲の著作(ドイツ語原題は『一つの惑星〔地球のこと〕が略奪されている』)を出版したところ、この本はドイツで短期間に数十万部を売りつくす一大ベストセラーとなり、さらにこの一冊の本によって、西ドイツ「みどりの党」が結成されるに至る。
 ところが、このような西洋の動きが、日本の社会の主流にはまったく影響を与えない。見事にそれは黙殺される。それどころか、西洋の本モノの科学者たちのこうした発言を、日本のマスコミ学界政財界の主流と無数のその亜流たちは、ありったけの悪口雑言罵倒を浴びせて、嘲笑し、笑殺し、葬り去ってきた。
 
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