「白人スタンダード」という
新たなる侵略
清水馨八郎・著 祥伝社 

 なぜ、白人のみが肉を主食とするようになったのか

 ヒトには草食が適しているのに、ヨーロッパ人のみ、なぜ肉を主食とするようになったのか。現在欧州の中央に位置する英独仏の主要民族の出自は、北方ノルマレディ、すなわちバイキングの子孫である。なぜ彼らは、冬が半年も続く太陽の乏しい極寒の地に住むようになったのであろうか。そもそも彼らの祖先は、南方コーカサスあたりに住んでいた。それが、東方から野蛮、獰猛な蒙古民族に追われ追われて、難民となって極北の地に逃れ、やっと生き残ってきた民族のようである。
 バイキングの故郷スカンジナビア半島のスウェーデン、ノルウェーやバルチック海沿岸地帯は、地質時代に広く氷河に覆われていて、それが残した峡湾(フィヨルド)や無数の氷河湖が点在し、土壌も劣悪で日照も乏しく、寒冷で農業に不適な環境である。したがって、生きるための生業は狩猟・牧畜か、他民族を襲う海賊、山賊による略奪とならざるをえない。
 西洋史の大家の会田雄次氏によれば「略奪が一番簡単で、一番豊かな生活を約束することで、ヨーロッパ以上の場所はなかったのだ。日本では泥棒、強盗は馬鹿がやる一番損な仕事になっている。略奪はヨーロッパでは優秀な人間がやる業と考えて、日本とは全く逆の価値判断である。イギリスの五家は元祖が海賊(バイキング)であったことを誇らしげに宣伝しているほどだ」とのことだ。
 さらに北欧人の交易品の第一は狩猟による毛皮であり、第二が奴隷だった。他部族を襲って弱い女、子供を簡単に拉致して奴隷として売り飛ばすのが、敏捷な動物を捕えるより容易だったからである。
 ヨーロッパの奴隷制は15世紀以後のコロンブスから始まったのでなく、古代から全ヨーロッパ社会の普通の社会現象だった。東ヨーロッパを覆う「スラブ」民族の名の由来が「スレイブ」、すなわち奴隷業から来ていることでも分かる。奴隷は牛馬と同じだから、搾取するにも殺すにも、何の哀れみも罪の意識も感じないですむ。
 現在まで欧州人の主食は肉であり、副食のバター、チーズ、クリームは、すべて牛乳を搾った酪農品である。彼らは数千年の昔から、ウシの命を搾りに搾って暮らしてきたのだ。ミルクは牛の赤ちゃんの血血(ちち)を横取りしたものだ。乳が出なくなると、退職金も出さず、感謝もせず、叩き殺して食ってしまう。ヨーロッパ白人の異民族への搾取文明の素地は、この搾り取る生業への習い性から必然的に生まれたものであろう。
 
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