「白人スタンダード」という
新たなる侵略
清水馨八郎・著 祥伝社 

 日本人を蝕むアメリカの享楽文明

 アメリカは戦後日本人を堕落させるため3Sを奨励した。それはセックス(Sex)とスポーツ(Sports)と映画(Screen)の3つであった。政府もこの計略に乗せられてか、休日や余暇時間をやたらと増やし、勤勉な国民を享楽と懶怠(らんだ)に励むように仕向けた。
 戦後、性の解放は人間の本性だとばかり好色産業がいっせいに花開いた。ソープランド、連れ込み宿、テレクラといった戦前になかった性産業が花ざかりである。エロがプロ化して栄える社会の退廃現象をみて、識者は日本はテロよりエロで滅びると叫んで警告を発している。
 戦後のスポーツ界は、野球も、サッカーも相撲もプロ化して、全国民をそれぞれのファンに巻きこみ、選手は国民の人気の的になった。プロ野球の選手や相撲の力士は、国民のあこがれで、現代の英雄となっている。テレビをひねると一日中、スポーツのニュースが、どこかの局から流され、時局ニュースより人気がある。今時の青少年は学校で勉強するより、スポーツの選手になることが成功への早道と考えるようになっている。
 さらに日本をダメにするものとして、前記の3Sに加えて歌(Song)、好食(Sweet)、を挙げねばならない。テレビをひねるとその3分の1は誰かが歌っているか、何かを食べている番組の連続である。現在国民に最も影響を与えるテレビで、あんなに歌ったり、食べていてよいのであろうか。クラシックや演歌は心の安らぎになるが、好食をこれほど奨励してよいのであろうか。
 旅行番組で各地の地理や風土を学べると思って楽しみにしていると。その大半は、旅館や食堂の名物料理の紹介とタレントたちのこれはうまいと食べているシーンの連続である。これほど飽食の時代に、これでもか、これでもかと好食を煽(あお)ってよいのであろうか。近頃のテレビ番組を見ていると「人生とは食うことにあり」と導いているようである。この傾向は、国民健康上も大いに問題である。
 以上挙げたスポーツや享楽文明は、これらを日本に強制したアメリカのほうがはるかに先進国である。人生を楽しむ享楽こそアメリカ人の人生のすべてのようである。日本人は日本人としてのもっと深い人生の楽しみ方がある。この点でもヤンキースタイルを真似る必要はない。
 
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