「白人スタンダード」という
新たなる侵略
清水馨八郎・著 祥伝社 

 日本人は残虐民族との、とんでもない言いかかり

 次に、東京裁判において日本人は「世界一残虐性に富む野蛮民族」と断定されたが、これも全くアベコベの言いがかりだ。
 日本は温和な島国で、草食で暮らす農耕民族である。中国から欧米に至る大陸民族は肉食で毎日血を見て暮らして平気な動物型人間で、闘争心と残虐性に富む。日本は国土が光と水と土に恵まれ、豊かな緑の環境の中で、ほとんど外敵らしいものがなく、菜食中心のおとなしい植物型人間になっていった。これは自然の生態から当然である。
 神様のお供え物は野菜果物だが、彼ら白人は生贄を捧げる。西洋の神に野菜など供えたら、神は首を横に振って、「ケチ、馬鹿にするな」と怒り出すはずだ。
 キリスト教徒は十字架にかけられたキリストの、血のしたたる残酷な「刑死」の姿を毎日拝んでいる。私たち東洋の民は、お釈迦様の「自然死」の涅槃の安らかに横たわる姿に親しみを感じる。観音様も如来の像も血とは縁がない。仏教には一神教の怨念や原罪の思想はなく、慈悲に充ちた温かい安らぎがある。日本には奴隷制度の歴史はなく「ドレイ」という言葉もなかった。世界の文明国で日本のみが「奴隷」という概念さえ持たない奇跡の国なのである。
 西洋の王家の紋章は、ライオン、熊、双頭の鷲といった猛獣禽類なのに、日本の皇室は菊、将軍は葵の御紋である。各家の家紋もすべて植物で構成されている。
 世界の動物の分布を見ると弱肉強食、自然淘汰の原則に従って、弱い動物ほど大陸の周縁や島や山奥に追いやられて分布している。ユーラシア大陸の中央には虎や狼のような強い肉食獣が棲み、有袋類のカンガルーやコアラが大陸に遠い豪州に逃れて、やっと生き延びている。山頂に追い上げられて生き残ったのがパンダである。
 地球上の人類分布も同じように動物の生態分布に従っている。大陸の中央はジンギスカンのような勇猛な蒙古民族が占拠し、周辺の異民族を蹴散らして、弱い民族ほど辺境の山奥や半島、島に追い立てられている。マレー半島や朝鮮半島の民は弱いがゆえに半島の先で生き延びているのである。
 日本民族は半島からさらに前方の島々に逃れてきて、コアラのような争わない温和な民族になっていった。幸い移動先の日本列島は自然が豊かで気候温暖なため、そこに住む人々も花鳥風月を愛し、義理人情に心を動かし、大陸の民のような荒々しい闘争心が育つ理由はなかった。
 農耕民は自然が相手だから、勤勉に正直に働けば、その分だけ報われる。対する狩猟の民は罠や囮(おとり)をかけ、相手を騙すことが生きる道であり、そうしても平気である。日本人は正直で騙されやすい民族となった。性善説と性悪説の違いである。
 
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