2020年8月
首都直下・南海トラフ
日本消滅
32
地震研究家が語る次の地震の恐ろしさ
 
 
 私が巨大地震について述べてきた内容とほぼ同じことを、地震研究家の福和伸夫氏が、その著『次の震災について本当のことを話してみよう。』で述べていますので、おさらいの意味でその内容を抜粋してご紹介しておきます。
 首都直下地震、南海トラフ巨大地震、そして富士山噴火という大災害が日本を襲った場合の被害の状況を考える上で大変参考になる分析です。
 原文を尊重しながら抜粋し、文意ごとに分けて箇条書きにしました。
 特に注目していただきたいポイントを、私の判断で赤い文字に変えています。

■『次の震災について本当のことを話してみよう。』福和伸夫・著/時事通信社

@ 南海トラフ大地震では、震度7の揺れが東海地方から四国、九州まで10県153市町村に及び、
国民の半数が被災者になる可能性がある。

A この地震は
「いつか来るかもしれない」のではなく、「必ず来る」

B 東京も大阪も軟弱な地盤の低地に都市を広げ、異常な過密が進んでいる。そこに林立する超高層ビルの安全性は十分には検証されていない。

C 戦後、日本は経済成長を遂げ、電気、燃料、水道、通信網が高度に発展し、それを基盤にした社会に日本人は生きている。巨大な震災はそれらをすべてストップさせて容易に回復できない事態をもたらす可能性がある。

D 企業はこぞって事業(業務)継続計画(BCP)をつくっているが、ほとんどの計画が「自分の会社の中」で閉じていて、
電気や通信や、ガスや、水などが途絶えることを考えていない

E 現代は人口の半分が東京や大阪などの大都市に集中している。安全な場所が不足して、堤防で守られた
ズブズブの地盤の上に高層ビルが建ち、電気やガス、水道、インターネット回線、地下鉄など、複雑に絡み合ったインフラに支えられている。

F 震度6弱以上、または高さ3メートル以上の津波が沿岸部を襲うと想定される自治体の人口は5,900万人になる。「
日本人の2人に1人が被災者になる」可能性がある。

G 被災予想地域は、自動車輸出の9割、製造業の6割を担っている。
重要港湾はダメになると石油やLNGが入って来なくなり、発電がストップ。水も電気がないとつくれないからダメ。製造業は連鎖してすべて停止するかもしれない。

H 南海トラフ地震は、関東大震災の火災、阪神・淡路大震災の家屋倒壊、東日本大震災の津波がすべてやってきた上で、新たな大都市の脆さが連鎖する。それは「リスク」というよりも「カタストロフィー」、破滅だ。

I 日本列島は海の中のごみや火山の噴出物でできているので、岩盤でできた大陸と違って地盤が脆弱である。日本人はさらに地盤の軟らかい干拓地、埋め立て地に都市を広げてきた。

J
東京も大阪も名古屋も、街はかつて海だった地盤の軟らかい場所に広がっているので、液状化して揺れが収まらない。そんな場所に、揺れやすい高層ビルを好んでつくっている。

K こんなズブズブ地盤の上に、日本の中枢機能である官庁や大企業のオフィスビルがひしめき合っている。情報を伝える会社、我々がお金を預けている会社、保険をかけている会社などの本社が集中し、気象庁や東京消防庁などの防災官庁も建っている。

L 首相官邸の隣にあるのは「溜池」という地名。東京スカイツリーは関東大震災で最も大きな被害のあった土地に建っているので、私はあの展望台に上るときは少し緊張する。

M 明治時代、うるさくて煙を出す蒸気機関車は嫌われものだったため、鉄道は地盤の悪い街外れを通した。現在のJR中央本線は川筋や谷筋を通っており、駅名は「神田」「御茶ノ水」や「水道橋」「飯田橋」「市ケ谷」「四ツ谷」「大久保」「荻窪」など水や谷に関係したものばかり。「品川」駅も、もともとは海の中だったが、堤防をつくって通した。墨田区や江東区などの海抜ゼロメートル地帯は、もっと心配だ。

N スイスの保険会社が2013年に公表した自然災害危険度が高い都市ランキングで、世界ワースト1位は「東京・横浜」、2位はフィリピンのマニラ、3位は中国の珠江デルタ、4位が大阪・神戸、6位が名古屋となっている。
 
一都市圏に3,000万人以上が密集しているのは先進国で日本の首都圏だけ。脆弱な土地に人や建物が集中し続けるこの国の行く末が心配だ。

O 江戸時代(1707年)の宝栄地震では、西日本各地に強烈な揺れと大津波が押し寄せ、大阪だけで2万人以上が亡くなったという。1854年の安政の南海地震でも、大坂の人は火災を避けて乗り込んだ大きな船が、津波に押し流されて街中の橋にぶつかり、橋を壊して回ったそうだ。その石碑が建てられ、次に津波が来ても「決して船で逃げようと思うな」と戒めている。

P かつては海の中にあり、今は淀川の支流の中洲である中之島には市役所があり、銀行やマスコミや電力会社の本支社が集まっている。ビルの地下には非常用発電機など、ビルを維持するために大切な機械やインフラがあるが、高潮や津波のときにどう対処するのか、不安が残る。

 
昔は私も大坂・梅田の地下街はよく行っていましたので、なじみの店もありましたが、そこに津波の水が流れ込んだらどうなるかと思うとぞっとします。地下鉄にしても、停電のなかで津波の汚れた海水がどっと入ってくれば逃げ場はありません。
 必ず津波を伴う南海トラフ巨大地震の持つ恐怖の一面と言えるでしょう。大都市・大阪はそのための対策を考えているのでしょうか。大いに疑問です。


 
引き続き、『次の震災について本当のことを話してみよう。』(福和伸夫・著/時事通信社)の内容を引用します。

@ 現代社会の決定的な弱さは、水や電気・ガス、燃料、道路や鉄道、そしてインターネットや携帯電話などの通信に過度に依存している。しかも、それらは複雑に関係し合っていて、1つのインフラがやられると、被害は他のインフラにも連鎖的に広がり、生死の問題や社会の破綻に直結してしまう。

A
水は電気や燃料がないと送れず、電気は水と燃料がないとつくれない。燃料をつくるには水と電気が必要。そして、いずれも道路が途切れると動かせない。製造業も工業用水や電気・燃料の供給が途絶すると、長期の生産停止に追い込まれる。

B 生きるために何より必要な水だが、浄水施設や配水池への送水、集合住宅での水のポンプアップなどに電気が欠かせない。停電時には非常用ディーゼル発電機などが必要で、燃料を確保しておかなければ水は供給されず、消火活動や医療活動にも影響する。

C
給水車の数は人口10万人に1台程度しかないので、広域の災害では全く不足する。だから車に給水タンクなどを乗せて配給することになる。車両と運転手の確保が必要になるし、道路が通れ燃料が確保できることが前提。

D たとえ道路が無傷でも、トラック事業者が事業継続できていなければ物流がストップしてしまう。また、運転手や燃料の確保はできるか、物流拠点の対策は十分か、情報システムや通信の確保はできているかなど、心配なことがいろいろある。

電気、ガスの途絶も長期化

@ 今では多くの原発が停止している。代わりにフル稼働している
火力発電所は、原発ほど、地震に強くつくっているわけではない。発電には膨大な燃料と冷却水、広大な敷地が必要なので、沿岸部の埋め立て地につくられることが多く、津波や高潮、揺れや液状化などの被害を受けやすい。

A
津波でタンカーが接岸する岸壁が損壊すれば燃料の受け入れができないため、たとえ発電所が無傷でも燃料不足に陥り、発電が再開できない。

B また、送電鉄塔、変電所、電柱などの配電施設、顧客の受電設備などが地震や津波で壊れると電気を送ることができない。

C 電力の自由化が進んでいるが、社会の根幹をなすものについてまで自由化してしまって大丈夫だろうか。社会の生命線とも言える発電所や送電網の安全性は、何が何でも守るよう社会でコスト負担する必要があると思う。

D タンカーなどで輸入される液化天然ガス(LNG)のうち、3分の2は火力発電所の燃料に、3分の1は都市ガスに利用される。都市ガスの約7割は工場などの産業用、残り3割程度が家庭用。

A 都市ガスは導管が地中に埋設されていることもあり、一度被災すると復旧には時間がかかる。阪神・淡路大震災では復旧に3カ月を要した。

複雑な通信も命取りに

@ 同じ電柱を複数の光ケーブルが通っている場合が多いので、地震によって電柱が倒れると同時に被災する可能性がある。また、ケーブルは大丈夫でも、停電時のバックアップ電源がなければ通信の確保はできなくなる。

A 大企業や自治体は光ファイバーを利用したインターネットに依存している。停電時のバックアップ電源がなければ通信ができなくなる。
インターネットが途絶すると銀行の決済はできず、電子カルテを使っている病院も機能しなくなる。

下水やごみ処理の困難さ

@ 排水の処理ができなくなる。下水管はポンプや水処理、汚泥処理にも電気や燃料が要る。災害時に下水道が機能しなくなると、上水道を使うこともできなくなる。

A 環境省は南海トラフ地震で最大3・2億トンの災害廃棄物(がれき)が発生すると試算している。これだけのがれきを集積する場所の確保と、車両や運転手の調達ができるだろうか。がれきを処理しなければ復旧・復興はできない。

日本から始まる世界恐慌

@ 通常の災害では、災害復興で建設業を中心に内需が潤い、産業が再生するが、
南海トラフ地震では国内の産業がズタズタになり、復興するための人的、物的資源がなくなる可能性がある。

A 最悪のケースは
南海トラフ地震の前に都心を直撃する首都直下地震が来ることで、歴史的には十分あり得る。1703年に元禄の関東地震が起き、その4年後に宝永の南海トラフ地震が発生、続いて富士山が噴火したという歴史を忘れてはならない。

B 現代の東京を直下地震が襲ったら、首都機能は壊滅。政治、経済は麻痺する。東京の復興は簡単には進まないだろう。

C
東京は海抜ゼロメートル地帯に100万人以上が住んでいる。沿岸の堤防が壊れて水が入ると、街は水没。災害後にはそこから水を出すために堤防をもう一度つくり、ポンプで水を出さなくてはならない。事実上、その地域は放棄するしかないだろう。

D そんな中で東海・東南海地震が起きたら、世界はその後に南海地震が続くと警戒。まず経済面で日本は売り叩かれる。株安になり、日本の高度技術を海外企業が買い叩くかもしれない。そうすれば日本そのものの衰退につながるだろう。耐震化などによって地震被害を減らし、大地震をいなして、さすが日本だ、と思ってもらうしかない。


 この最後の部分を引用しながら、大変複雑な気持ちになりました。
 ここまで地震の影響分析ができるような専門知識を持つ人でありながら、その対策については「耐震化などによって地震被害を減らし」といった内容でお茶を濁して終わっているのです。国の主要な工業地帯が被災地となった日本の復活を、世界がのんびりと待ってくれるという認識でしょうか。
 これこそが「平和ボケ」の日本人を象徴する姿と思ってよいでしょう。これほどの知識人でも、首都直下地震と南海トラフ巨大地震が連続して起こることを見事に分析しながら、最後は「経済面で日本が買い叩かれる」「そうすれば日本そのものの衰退につながる」という結論を導き出して終わっているのです。
 はたして「衰退」程度で済むでしょうか。
 「国がなくなる」「国が奪われる」という認識はまったく頭に浮かばないのでしょうか。
 読者の皆さんはどう思いますか?
 もしかしたら、いまではほとんどの日本人がこの福和氏と同じような「平和ボケ」の状態ではないかと思ってしまいます。これこそが日本の危機なのです。そこまで日本人を「世界の景色が見えない人間」におとしめてしまった世界支配層の戦術の見事さに「敵ながらあっぱれ!」と賞賛を送りたい気分です。
 
 
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