ヤオイズム
矢追純一著 三五館 

 ヤオイズムの“6つの奥義”

 一子相伝とは「技芸の奥義を自分の子どもの一人だけに伝えること」と辞書には記してある。あなたと私とは親子ではないが、この際、言葉にはこだわらないでほしい。年齢にもこだわらないでほしい。私はあなたに宇宙のエネルギーの波に乗って、ラクに気持ち良く生きていただきたいだけなのだ。
 あなたはその宇宙エネルギーに逆らわない自然流の生き方に感染したいと無意識に思ったから、この本を選んだのだ。そこで、私とあなたとの間で、「一子相伝」を起こしやすくするために、次の六つのことを提案したい。

@【自分を安売りしない】
 人のために尽くすことが美徳だと思っているなら、まだあなたは妄想を手放すことができていない。人のため、友人のため、家族のため、両親のため、社会のため、国のために、自分を犠牲にすることはない。大切なのは、あなただ。あなたが自分を大切にしなかったら、これほど悲劇的なことはないだろう。
 なぜなら、あなたの思いがこの宇宙を作っているからだ。あなたが自己の素晴らしさを認めず、自分をかけがえのない存在として大切にしなかったら、だれもあなたの価値を認めなくなってしまう。
 この地球には73億の人間が暮らしている。妄想の中で暮らしていると、そのおびただしい数に圧倒されて、自分がちっぽけな、つまらない存在に見えてくる。
 ところが、この本を読み、強い覚悟が生まれると、逆転した世界になる。世界には73億というおびただしい数の人がいるのに、あなたという存在はたった一人しかいないことに気がつくのだ。あなたのユニークさ、あなたの素晴らしさに気がつくことができるのだ。
 この見方の違いがわかるだろうか。どんな有名人がいようが、どんな偉い人がいようが、またどんな美しい人がいようが、あなたにとって「あなた」以上に重要な人はいない、ということに気がつくのである。

A【人のせいにしない】
 覚悟がない人は、他人に依存して生きている。そういう人は何かいやなことがあると、すぐに人のせいにする。あるいは社会のせいにする。すべての原因が自分にあり、自分に責任があるとわかっている人は覚悟ができている。恐れや不安のとりこになるのは、自分で自分の人生に責任を取らないからだ。逃げることばかり考えているのだ。
 あなたは自分から逃げてはならない。

B【人を尊重する】
「自分を安売りしない」ことと同様に大切なのは、「他人を尊重する」ことだ。じつは、これができていない人が自分を高く評価できずに相手のいいなりになって、自己を犠牲にしてしまう。なぜなら、相手とは姿を変えた自分だからだ。
 あなたはあなたの宇宙で暮らしている。その世界であなたが見るものすべて、出会う人すべてがじつはあなたなのだ。この世界にはあなたの意識しかない。あるのは、あなたの思いだけなのだ。だから、あなたの思いですべては変わる。
 もちろん、そんな悟ったような見方はできないとあなたは言うかもしれない。それでもかまわない。その場合は、そう考えたほうが得だと思えばいい。実際、相手を尊重する人は人からも尊重される。結果的に、人を尊重する人は自分も尊重することになるのだ。
 尊重するとは、ありのままの相手を認めてあげること。良いとか、悪いとかの判断をすることではない。
「あなたは今のままのあなたのままでいいし、私は今のままの私でいい」と素直に認める。ただそれだけのことだ。

C【自分がいやなことを人にはしない】
 他人が自分だと思えば、自分がいやがるようなことを人にすることができなくなる。そうすれば、人からいやなことをされなくなるだろう。また、人のいやな面を見ても許す余裕が生まれるだろう。なぜなら、人のいやな面が見えたとしたら、それはあなたの中にもあるからだ。
 これらのことがわかれば、笑顔の大切さもわかってくる。人と接するときに笑顔を忘れないようになる。

D【ポリシーを持つ】
 車の運転を知らないチンパンジーが猛スピードで車を走らせているとしよう。チンパンジーにはそれなりの知恵があるので、運転席には座っているが、握っているハンドルがなんなのか、足で押しているアクセルがどのようなものなのかがまったくわかっていない。しかし、気がついたら車は猛烈なスピードで走っているのだ。これではどこへ行くかもわからないし、どこかにぶつかってしまうかもしれない。こんな恐ろしいことがあるだろうか。こんな不安なことがあるだろうか。
 もしあなたが「自分がどのように生きていくか」についてのポリシー、つまり方針を持っていなかったとしたら、失礼ながらあなたはこのチンパンジーと同じようなものだ。自分かどこへ向かっているのか、そこへ行ってどうなるのかがわからないにもかかわらず、時間はどんどん猛スピードで進んでいるので、わけのわからない不安や恐れに苛(さいな)まれることになるのだ。
 第五章で、自然流について話したが、ここでいうポリシーとはそれだ。あくまでも生き方であって、何かの形をめざすわけではない。自分の方向性を決めることなのだ。このポリシーについては、このあと別の角度からもみてみよう。

E【考えない】
 人間の最大の弱点は、どんな問題も考えればなんとかなる、と思っていることだ。しかし、実際には考えてもろくなことはないのだ。よく考えるときというのは、悩んでいるときだ。そして、悩めば悩むほど問題は複雑になっていく。
 だったら、最初から考えないほうがいい。考えるのをやめると、悩みは消える。悩みとは妄想だからである。実際、悩んでいないときは、あまり考えないものだ。考えはじめると悩みが生じてくる。つまり、考えれば考えるほどわからなくなるのだ。これも妄想のなせる技なのだ。
 考えるというのは自分の知識の中でその一部をアッチへやったりコッチへやったりすることだ。でも自分の知識はたいしたことはない。生まれてから今までの間に知りえたわずかなことにすぎない。それで、世の中だの世界や宇宙とわたり合おうというのは無謀としかいいようがない。
 思考はいらない。もともと考えなければならないことなどないのだ。思考があるので、恐れや不安が湧いてくる。思考とは、未来への恐れや不安、そして過去についての後悔だ。
 いずれにせよ、良いことはない。それでも人はあれやこれやと考える。なぜかといえば、人間はバカな生き物だからである。頭が良いと思っているバカな生き物だからだ。だから、一生懸命考えてしまう。
 私は自分がバカだと気づいているので、考えることはしない。自分ほどバカな人間はいないと心底思っている。
 なぜバカなのか? 自分がいつ死ぬかわからないからだ。なのに先を考えてクヨクヨする。バカの証拠だ。
 Dで述べたポリシーとは、おおまかなゴールのようなものだ。そのゴールを定めたら、あとはできるだけ何も考えず、ボーッとしていればいい。そうすると自然の流れがちゃんと働いて、あなたをゴールに導いてくれる。宇宙のインターネットにアクセスして、良いアイデアも出てくるのだ。
 思考も手足と同じ道具だ。道具は道具として使うべきだ。言うまでもなく脳は、胃や肝臓と同じ臓器の一種である。
 ところが人間の場合、本来は道具である脳に乗っ取られて、思考が自分だと思い込んで、悩んでいる。悩みは妄想であり、あなたではない。思考の支配から自由になって、宇宙のエネルギーと直結しているあなたが本当のあなたである。そのあなたが思考を支配下に置くべきなのだ。そのためには、ふだんからよけいなことは考えないようにすることだ。
 私にとって必要な考えは、段取りを決めることだけだ。今日のスケジュールはなんだっけ?とメモを見る。チェックするだけだ。あとはやるべきことの効率的な順番、つまり段取りを決めるだけで十分なのだ。1日5分ですむ。
 
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