●都市に住む覚悟ができているか 首都圏を震度6〜7の巨大地震が直撃する。 そのとき、どのような被害が発生するだろう? シミュレーションをしてみる。 すると恐ろしい数字がはじき出される。 最悪100万人の犠牲者が想定されるのだ。 ●「人が人を襲う」地震に 「首都直下地震が起きれば、まちがいなくわが国が過去に経験したことのない惨事が起こる。 大正12年の関東大震災の比ではありません。いまや首都圏には日本の人口の4分の1が集中し、安全は、はっきり言ってないのです。その中で、生き延びるのがいかに難しいか」(国崎信江 『週刊現代』2012/10/20) 同氏は危機管理教育研究所代表。文科省の地震調査研究推進本部政策委員も務めている。 その防災研究第一人者の予測は恐ろしい。次に首都直下地震が起きたらどうなるか。 「『人が人を襲う地震』になる」という。 「人が多すぎて逃げられない。ケガをしても充分な治療が受けられない。火災が発生しても消火活動ができない」 そして、こう断言する。 「私は、東京など都市部に住み続けたいと考える人たちには、『都市に住む覚悟ができていますか』と問いかけるようにしています」 ●避難場所に逃げるは幻想 同誌では和田隆昌氏(災害危機管理アドバイザー)も警告している。 「土地の低い銀座や新橋などはハイリスクな土地なのに、意識しないでいる方がほとんど」「人口集中している都市で避難するのは非常に難しい。3・11以降、行政は災害時に無理に家に帰るのはやめようと呼びかけていますが、ひとたび徒歩での帰宅が始まれば、道路は人で溢れかえります。緊急車両も有効に動けなくなる」 まず、避難しようにも道路が通れなくなる。3、4階建の古いビルなど、「震度7」では、まちがいなく倒壊し道を塞ぐ。地下道も落盤し、道路もあちこち陥没する。まず、道が寸断され被災者は瓦礫の中に閉じ込められてしまう。 和田氏は断言する。 「指定の避難場所までいけるなんて幻想ですね」 ●避難場所がむしろ危ない 高橋学教授(立命館大学・歴史都市防災研究所)も警告する。 「これまで常識だと思われてきたことが、実は常識でなくなっている」という。 「地質的に見た場合の『下町』とは、海底に溜まったプリンのように軟弱な地層の上に過去1万年ほどの間に河川の氾濫で、土砂が1〜2メートル、カラメルソースよろしく載った土地です。これが脆くて危険なことはよく知られている」 江東デルタ地帯と呼ばれる一帯は海抜ゼロメートルで地盤も弱い。 「ところが、そういう地層は、首都圏なら埼玉県の大宮、行田、さらには群馬県の館林まで続いている」(同誌) つまり、関東全域がプリンの上に乗っているようなものなのだ。 高橋教授は「避難場所も危険」という。 「(都が指定する)日比谷公園や上野公園は、かつて海だった場所。地域の拠点となる避難場所がむしろ危ない」“液状化”だけでなく、揺れも非常に大きくなる。土地が低いので地殻変動で地盤沈下すれば、海水が直接人ってきます」 そこに数万、いや数10万人もが避難している。阿鼻叫喚の地獄絵となるだろう。 ●「引っ越す」ベストの選択 「防災は、土地に始まり、土地に終わる」 国崎氏は言う。 「『安全な土地に引っ越せというのは理想論だ』とおっしゃる方もいます。しかし、一度被災したら、失われた家族は戻ってきません」「おカネに関しても内閣府データによると、半壊、全壊に限らず家の再建に平均2,000万円、食器や家電製品など新しい家財の購入費が2,000万円以上かかる。引っ越し代なども含め、結局5,000万円以上の負債を背負っていくことになるのです」 横浜に生まれ育った国崎氏は主婦の立場から決断している。人口密集地で、危険な細い道ばかりだったので、思い切って房総半島の田舎に引っ越した、という。 「引っ越す」――これが家族の命と、財産を守るベストの選択なのだ。 |
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