輪廻転生
驚くべき現代の神話
J・L・ホイットソン/J・フィッシャー・著
片桐すみ子・訳 人文書院
 
第2章 私たちが還っていく故郷
B

 生れ変わりの研究では世界に名だたるイアン・スティーヴンソン博士は、中間世のことを「世界中がひとかたならず注目している話題」だ、と語っている。これまでに博士が「幕間の記憶」と名づけているものの観察例がいちばん多くみられるのはタイ国で、たくさんの被験者が死後に自分の身体を見、自分自身の葬儀をみまもったと報告している。あの世で「白衣の男」に出迎えられ、生まれ変わってくる前に「忘却の木の実」をもらった、という者も多い。この木の実を食べると前世の記憶は消えるが、中にはこの誘いにのらなかったため前世を覚えている者もいるという。
 スティーヴンソン博士の調査によれば、タイ以外の国にも、前世の自分のからだが火葬にされた記憶をもつ者や、どのようにしてこれから自分が生まれる家に導かれたかを覚えている者がいる。1928年に死んでから1947年に生まれ変わってくるまでのあいだに、自分が「空中を飛びまわったり木のてっぺんにとまったりした」と主張する者さえいる。スティーヴンソン博士の調査でよく見受けられるのは予知夢で、妊娠する前に母となる人が、かつて知っていた人が自分のところに生まれ変わってくることを、夢のなかで知らされるケースがそれである。この夢は、これから生まれ変わってくる人のまだ肉体に宿っていない意識と直接に接触したことを示すものと考えられ、夢で子供の名を指定してくることもある。ある生涯から次の生涯への移行状態のときに、未来の母親の前に姿をあらわしたことを覚えている、と話す人もある。
 イアン・スティーヴンソン博士が前世記憶の調査に世界中を歩きまわっていたころ、アメリカ国内では診察室のソファに被験者をすわらせて催眠をかけ、これとおなじ記憶をとりだす試みが行なわれていた。カリフォルニア州の催眠治療家、イーディス・フィオレ博士の1978年の報告によれば、博士が担当している被験者には、生と生の中間地帯へと入っていって「純粋のエネルギーと光」を見たり、「きれいな湖や景色、きらめく町々」を見た者がいる。そのほか、「計画者」とか「相談役たち」に出会って次の転生を選ぶのを手伝ってもらった、という話もある。出産前の母親の上方に「浮かんだ」魂に先導してもらったというケースもいくつかある。1979年にサンフランシスコの臨床心理学者、ヘレン・ウォムバック博士が大規模に行なった催眠研究の結果では、ほとんどの人が中間世の「光と愛」のうちにそのままとどまりたいと望んでいたにもかかわらず、生まれてくることを選んだという。ウォムバック博士の被験者によれば、生と生の中間の場所では性別はなく、多くの場合「相談者たち」や「評議会」、「権威者のグループ」と相談の結果、いやいや生まれ変わるのに同意したという。
 中間世をみてきたと報告する人は、たとえてみれば南の国を旅して帰ってきて、太陽が北から照る話をしてみんなに馬鹿にされた昔の船乗りのようなものだ。船乗りの話は故国では疑いの目で見られた。つまりその話がヨーロッパでの太陽の動きと食い違い、当時の考え方に対立するものだったからである。未知への挑戦というものは、しばしばその時代の知識を混乱させる結果になるものなのだ。
 
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