輪廻転生
驚くべき現代の神話
J・L・ホイットソン/J・フィッシャー・著
片桐すみ子・訳 人文書院
 
第4章 生と生のはざま
A
 ひとたび中間世に足をふみいれると、催眠下の被験者の目の前にはありとあらゆる種類の意味あるできごとや劇がくりひろげられるが、被験者はこの混乱状態をうまくまとめて、自分が何を体験したかを伝えるためにこれを何とか解読し、翻訳しなければならない。結果的には、彼らは無意識のうちに、精神分析の大家カール・ユングが「元型」と名づけた、集合的無意識から生じた普遍的なシンボルを使ってこれを表現する。バルドの旅行者は、シンボルを通じてこの時空のない世界を理解し、表現するほかはないので、たやすくシンボル化できる人は多くを語るが、視覚化が苦手な人はあまり話をしないことが多い。
 被験者たちがあえてバルドへと入っていったのは単に調査のためであって、生身の人間ではめったに行けない場所への旅の情報を得ること以外には、なんの報酬も期待したわけではなかった。だがまもなく、彼らの体験――「裁判官たち」に出会ってから、来世のための「カルマの台本」を「書く」にいたるまでの――が、実は治療上有意義なものだということがわかってきた。前世からの恐ろしく苦しい記憶を解放することが、多くの人に奇跡的な治療効果をもたらす事実はすでにわかっていたが、そればかりでなく、中間世を体験することで、被験者たちは自分のことをよく理解できるようになったのである。超意識を通じて、彼らは現在の自分がなぜこのような環境にいるのかを知るに至った。さらに、肉体に宿っていない状態にあったとき、自分たちがこれから生まれようとしているこの世でどのような境遇にめぐりあい、どんな事件にかかわりあっていくのかを、選びとったのは自分なのだと悟った。両親、職業、人間関係、喜怒哀楽にかかわる主なできごとも、すでに前もって選ばれていたことがわかったのである。
 
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