輪廻転生
驚くべき現代の神話
J・L・ホイットソン/J・フィッシャー・著
片桐すみ子・訳 人文書院
 
第4章 生と生のはざま
I

 この世への帰還

 最終決定をしてしまえば、あとはもう一度肉体へと下降するだけである。死とはまさに帰郷、すなわち闘いと苦しみから戻って憩う休息期間であり、誕生は熾烈な新しい仕事の第一回目だ、ということが超意識から明らかになっている。この世の試練を熱心に待ちのぞむ者もあるが、時間と空間のないバルドを捨てて物質界の拘束をうけるのに気が進まない者がほとんどである。
 当然、この世への帰還を人一倍いやがる者もでてくる。ある男は、古代ギリシアで年端もいかない少年たちを働かせて虐待したことがあった。その彼は、こんどは自分が同性愛者としてこの世に戻って虐待を受けるのに怖れをなし、「男の慰み者になるだって! それだけはかんべんしてくれ……」とトランス状態で悲鳴をあげた。
 のちに彼はこう語っている。

 あの身体に入っていくしかありませんでした。裁判官だもの助言でいやいやながら選んだのであって、選んだからには最後までやりとげなければならなかった。せきたてられたような気がします。

 そう長く転生をこばみつづけることはできないようだ。この被験者が証言したように、ゆくゆくは宇宙的な圧力が蓄積し、魂を物理的肉体におしこんでその歩みを再開するよう強要するのだ。
 肉体に宿らないでいる期間がどの程度の長さになるかは、人により、また生涯によりかなり開きがある。ホイットン博士の被験者たちの場合、死んでからつぎの転生まで最短十カ月、もっとも長いもので八百年以上におよぶ。中間世の平均滞在期間――40年ほど――は過去数百年のあいだに確実に縮まってきている。昔の世界では世紀から世紀への地球の変化はほとんどなく、今日ほど転生の誘因も多くはなかった。あたかも変革があいつぐ現代の世界が、この世の新しい体験をずっと待ちのぞんできた者たちを誘い込むため、肉体を脱している期間が短くなってきているように思われる。このことから世界的な人口増加もうまく説明できるのではなかろうか。ホイットン博士の被験者のうち何人かは、第二次世界大戦中に死んで、まもなく転生してベビーブーム世代に加わったという。
 
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