大世紀末 
サバイバル読本
“食育”編
浅井隆+花田美奈子・太田晴雄
総合法令
 
プロローグ

 日本人の“食”と“健康″にいま、重大な異変が起こり始めている。
 長寿大国の裏側で私たちの健康を支える“食”に重大な危機が訪れようとしている。
 古来、食は人間の運命をも左右するといわれる。
 高度な頭脳と文明を持った人類といえども、その活動の根源である食において、自然の摂理に反することを続けるならば、自らの五体という内なる自然から壮大なシッペ返しを受けることは必定である。
 はるか数十億年のかなた、原始の海のどこかで、われわれ人類の祖先が原始アメーバ状の生命体として誕生して以来、その壮大な命の連鎖の中で、われわれとその祖先たちは、いかに外界から有効な栄養とエネルギーを取り入れ、体内で活用し、また外界へ出すかという摂理を繰り返してきた。
 ところが、その“食”という人類永遠の命題にいま一大異変が起ころうとしている。一見豊かそうに見える現代人の食生活の裏側で、生命の根源を揺さぶるような危機が訪れようとしている。
「地球という限られた環境の中の複雑かつ微妙な食物連鎖のメカニズムの恩恵を受け、大自然に秘められた“気”を食物から取り入れてのみ命を維持できる」という生命がもつ本来の宿命を現代日本人は忘れてしまった。
 西洋科学合理主義の強烈な洗礼をまともに受けてしまったからだ。
 急激な地球環境の破壊、食生活の急速な変化と合成添加物の乱用、そして古くからあった伝統的な食の知恵の衰退――それらが一体となって我々の健康と生活をいま一挙に押し潰そうとしている。
 日本は世界一の長寿大国の名を欲しいままにしているが、その前提が崩壊しつつある今、急速な寿命の短命化か起こる危険性が日々高まっているのだ。
 近くのコンビニエンス・ストアをのぞいてみよう。合成添加物を大量に含んだインスタント食品が山積みされ、農薬づけの野菜、そしてホルモン剤をたっぷり注入された肉が所狭ましと並んでいる。こうした食品を毎日のように食べ続ける日本の若者は、自らの将来と健康を台無しにしている。
 例えば、ブロイラーといわれるチキンのほとんどはいまやすでに“工業製品”そのものと化している。効率化だけを至上命題として追求し続けたため、真っ暗にした工場内で通勤電車並みにスシ詰め状態にして育てられる。さらに、ホルモン剤や抗生物質などの薬物を大量投与して極めて短期間に“製造”される。昔のように農家の庭先を走り回ってミミズをつつき、太陽の恵みをサンサンと受けてすくすく育ったニワトリとちがい、工業製品と化したブロイラーは奇形が多く、体内は薬漬けである。
 アメリカではチキンを食べすぎた男性がやがて胸がふくらみ原因不明の奇病で死ぬという事件まで起きている。その男性の遺体からはチキンに含まれていた女性ホルモンが大量に検出された。
 そうしたニワトリもどきがスーパーやコンビニエンス、そしてファースト・フードの店に大量に出回っている。日本人に半病人や半健康人がふえて当然の状況が出現している。
 そうした中でいま、“食”に対する見直しが始まろうとしている。教育、体育に続き、“食育”の必要性が高まっている。
 食べ物の質と食べ方があなたの人生と運命を決定するからだ。
 こうした状況下でいま、アメリカにおいて注目すべき動きが出てきた。アメリカの最先端をいくエリートたちが日本の伝統食に目をつけ、新しい健康食として大いに利用し始めたのだ。玄米、コンブ、ミソ、豆腐など、和食がもつ素晴らしい特質が世界的に認められ始めている。
 日本でも少しずつ和食の良さが見直され始めているが、やがて大きなトレントに発展するだろう。21世紀にはアジアの国々の興隆の中で東洋ルネッサンスの気運が巻き起こり、その中で日本の伝統食が新しい装いをもって世界的に大流行するはずである。
 いずれにせよ、現在始まりつつある不況と混乱の大世紀末を生き残るためには、“食”からあなたの人生をリストラ(再構築)するしか方法がない。その意味では“食育”こそ、サバイバルの原点となるにちがいない。しかもそこには、21世紀のニュービジネスのタネがいっぱい詰まっている。
 なにしろ、命あってのモノダネであり、健康あってこそのビジネスだからである。
 21世紀に人類が生き残り、新しい発想に立脚した文明を築くことができるとしたら、その基盤こそ、「食育」そのものにちがいない。
 いま、まさに「食育革命」が始まろうとしている。
 
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