豚のブロイラー化、歩けないトン君

浅井　抗生物質といえば、チキンはどうですか。ファーストフード店のなんか、あれを見るとソッとするのですが。
花田　日本は戦後、経済的には成長してきたけれど、いまの若い人の食文化も変わってしまいましたね。
浅井　これはもう一度、昔の日本の食文化に戻さなくてはなりません。いや、世紀末にかけては自然にそういう流れになると思いますけどね。これは第２章のメイン・テーマでもありますが……。
花田　日本人の健康を考えたら、絶対にそうならなければね。
浅井　別にアメリカ式の食事が悪いというのではなくて、たとえばチキン。あれはブロイラーと言われていますが、ふつうのスーパーなどで売っているようなチキンは、まさに工業製品ですね。
太田　ニワトリは、あまり密集して飼うと問題が起きる。一つの問題はお互いにケンカをすることです。そのためにどうするかというと、室内を真っ暗にしてしまう。しかも密集すると病気が発生するので、抗生物質やら何やら考えられないものを投与するのです。もう自然の食べ物じゃない。
花田　ハンバーガーとフライトポテトを組み合わせると、脂肪の摂取量は軽く40グラム。大人で適当な脂肪の摂取量は50グラムですから……。
浅井　ところが相変わらず若者に人気は抜群で、日本マクドナルドの発表によると、たとえば9月4日の1日の売上が、全国1068のチェーン店合計で12億6430万円を記録したと。これは1日の売上額としては過去最高なんですね。来店者数も385万人で、これまた史上最高。
花田　やっぱりねえ。幼児の頃からこんな悪い食品漬けでは、日本の未来は暗いですねえ。
太田　肉のブロイラー化というのは、チキンだけじゃありませんよ。豚もそうです。最近の豚の飼育をしているところ、ご覧になったことありますか？
浅井　いや、ないです。
太田　昔は1人で数頭しか飼えなかったものですがね。いまはそうですね、大きな養豚場に行くと、だいたい4〜5人の従業員で2000−3000頭は飼ってます。ブロイラーと同じです。
　前を向いたらそのまま。一生前を向いたまま暮らすという豚ですよ。犬は、「頭が西向きゃ尾が東向く」といって自由に動けますが、トン君はお散歩どころか尾は東向いたまま回れ右もできない。でも飼育小屋は非常に清潔に作ってありますよ。床も全部目の粗いスノコ。
浅井　終身刑みたいなものですね。でも最後は殺されちゃうんだから、もっとひどい。
太田　もう最初から死刑は宣告されていましてね。その刑の執行が行なわれる前にですね、収監しておくオリなんですね。
浅井　拷問ですね、動けないというのは。ストレスはたまるわ、“毒”は食べさせられるわ。
太田　そのせいかどうか、最近の豚には精神障害が非常に多いらしい。脳に欠陥を持っているトン君というのが、案外多いんですよ。豚は哺乳類ですから。それから奇形も。脳が半分欠けていたり、脳が溶けてしまったり。
浅井　豚はすごい清潔好きだと言いますからね。
太田　スイッチを入れると、頭上から水がザーッと流れ落ちてきて、フンやなんかもキレイに洗い流します。ただ問題は、豚に食べさせているエサですよ。これも抗生物質がやたらと入っている。豚というのは意外にデリケートな動物でしてね。よく風邪をひくんです。そうすると、風邪をひかないようにといって、抗生物質。
　ほんとは風邪をひいてからのませればいいんだけど、ひく前からのませる。とにかく死刑執行までは丈夫で太らせておかなくてはなりませんから。
　そこで私は、指を切ったりケガをしたときにもっぱら豚肉を食します。傷口が化のうしないで済みますから（笑）。
浅井　はあはあ。ハマチは風邪ひき用で、豚は化のう止め用ですか（笑）。奇形といえば牛もそうでしょ？
太田　15年ほど前、3本足の牛が話題になったことがありましたね。それから首が2つある牛とかね。そういう牛は本当に怖い。薬物障害のおかげで、遺伝子が傷つくんでしょうね。ホルモン剤なんかも投与しますから。
花田　一時期、「私が肉を食べないわけ」という本が出ましたでしょ。イギリスの人が書いたんですけどね。男の子が子牛の肉を食べ続けたら、ホルモン剤の影響でオッパイが大きくなってしまったというのです。
　英国ではそのホルモン剤の投与はもちろん、製造そのものを中止させたのですが、外国で作られたものが密輸入されて、結局取り締まれない。サッチャーさんもすごい苦労をされたようですよ。完全にやめさせるには、ぼう大な予算がかかるんですね。だからやれなかった。結局、養牛業者としては早く育てて早く売ったほうが儲かるわけだから。
太田　とにかく肉は怖いですよ。しかもハンバーグみたいにミンチにしちゃったらもうわからない。あれは一番怖いですね。もともとどんな肉を使っているのかわからないのですから。
花田　子どもの高血圧症なんて、みんなそうじやないんですか？
浅井　子どもはハンバーグが大好きだから。

　（以下略）