大世紀末 
サバイバル読本
“食育”編
浅井隆+花田美奈子・太田晴雄
総合法令
 
第1章 その食生活があなたを殺す

■塩分ひかえてね――の迷信

浅井 塩はひところ、“健康の大敵”としてすっかり悪役にされてしまいましたね。ところがいまは塩ブームとか。水商売から塩商売へ、どういう風の吹き回しでしょう。
太田 もともと塩自体が悪いわけではなかったんです。日本専売公社で売っている“塩”が実は塩じゃない。NaCl(塩化ナトリウム)という化学物質なんです。いまの日本の塩はホンモノじゃない、「日本では塩は売っていない」――というのが私の見解です。
浅井 人間はもともと海から生まれてきたのですから、体内の塩分が不足すると生きられない。要は程度の問題なんですが、肝心の塩がNaClでは、体内に入って海水と同じレベルが保てませんよね。
太田 病人に点滴するリンゲル液、あの中身の一部は昔は生理的食塩水と言ったくらいでね。
浅井 これは何かの本で読んだのか、誰かから聞いたのか、海の魚をいけすで養殖するとき、真水に塩を入れて海水らしくするそうですが、専売公社のあの“塩”を入れると魚がすぐ死んでしまう、と。
太田 アサリがいい例です。私、よくベトナムから塩を買って帰るんですが、日本の塩では水に入れてもアサリの口は開きません。そこヘベトナムの塩をパパッとかけますと、とたんにカチャカチャと音がし始める。
 水面がパーッと泡立ちましてね。貝がなんとこんな早さで口を開けるのか(?)と思うくらい口をパッと開ける。
浅井 ホンモノの塩だから反応するわけですね。
太田 本当に貝が笑うの。初めて見ましてね。
浅井 じゃあ、専売公社の塩を入れると貝が泣くと。
太田 本当にひどいんですよ。天然塩には、微妙な“ミネラル”が23%も含まれていて、それが海水と同じ組成を保ってくれる。薬品みたいなNaClを食事に使っていたら、からだにいいわけはありません。
花田 ベトナムの塩もよろしいでしょうけど、私はグアム島の隣りのロタ島の天塩が大好きですね。
太田 私もファンですよ。あそこの海岸へ行きますと。岩が風化したり波で浸食されてボコボコ穴があいている。台風のあった一週間後くらいに行きます。その穴に塩がたまっているんです。打ち寄せた高波の置き土産なんですね。
 それをゴツゴツと削ってホテルに持ち帰り、これをツマミに生ビールを飲む。これはもう抜群! 次がフィリピンのセブ島の塩かな。
花田 いま日本はおっしゃるとおり塩ブームですね。でもどちらかというと、食べる塩よりもからだに塗る塩。お腹にスリ込んで脂肪をとるとか、塩で髪の毛を洗うとか。
浅井 中身にもいろいろとビタミンやらミネラルやらを加えたと言ってね、付加価値を宣伝している。でも高いのが難点。
太田 そりゃ調理にパパッと使うより、からだにスリ込んだほうが大量に使いますからねえ。大企業の陰謀じゃないんですか? 私は昔ながらに、自然食愛好者の間でささやかに売られていた天然塩のほうが好きですけどね。
花田 最近のお塩の宣伝コピー。「卵白やハチミツ、ローヤルゼリーを配合した洗顔用塩。イスラエルの死海でとれた、ミネラルをたっぷり含んだ塩の入浴剤。あるいは海藻エキスにカルシウム入り……」
浅井 そそりますねえ。
花田 名前も「長者の塩」に「べっぴん塩」(笑)。
太田 これはもう化粧品です。食の問題じゃない。私、1995年度に塩の専売制が廃止されたら、絶対に世界のホンモノの塩を売りますよ。これはあくまでも食用ですが。
浅井 まさに水商売から塩商売へ!
 
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