日本人の誇り
日本人の覚醒と奮起を期待したい 
藤原正彦・著 文春新書
 

 少子化という歪み

 政治や経済の大崩れに追い打ちをかけるように深刻な少子化か進みつつあります。
 2009年の春、お茶の水女子大学を定年退職した私のために、下は学部4年生から上は50代半ばまでの、かつてのゼミ生か数十名集まり祝ってくれました。驚いたのは26歳から36歳までの参加者のうち半数以上が独身ということでした。私の圧倒的魅力を未だに忘れられず結婚できないのかな、とも思いましたが、事実は単に結婚したがっていないのでした。
 実は私も35歳で当時としては遅い結婚をしました。結婚したがっていなかったわけではなく、むしろ結婚したくてウズウズしていたのですが、勇躍臨んだお見合いがなぜか1引分け4連敗と不調だったのです。日本の女性の男性を見る目が未発達だったのです。アメリカではもてていましたから、私の顔は欧米向きなのかも知れません。
 ともあれ今は、女性達はなかなか結婚せず結婚しても産みたがらない。現在、30歳女性で出産したことのない人が50%を超えています。この年齢までに私の2人の祖母はともに4人以上を産み、母は3人を産み、女房には3人目がお腹にいました。晩婚となれば産んでもせいぜい1人か2人でしょう。そのせいもありここ5年間の出生率は1.34程度で、人口維持に必要なのは2.08ですから、ある時から急激な人口減少が始まることになります。
 それどころではありません。国立社会保障・人口問題研究所は生涯未婚率を算出しています。現在60歳の人では5%に過ぎませんが、現在30歳の人々だと23%、現在20歳の女性だと40%と予測しているのです。これではそう遠くない将来、日本ははしゃぎ回る子供達の見えない、独身老人で溢れかえった国になります。老後の面倒を見てくれる人のいない人達が大多数となったら、我が国の社会福祉政策は破綻に瀕すことになります。
人口がゆっくり減少するのは国土の狭小な日本にとってよいことですが、急激なのは経済だけでなく様々な予期せぬ歪みを生むことになるのです。
 
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