「心の時代」の
人間学講座
石川光男/船井幸雄/草柳大蔵 アス出版 

 生命の本質を理解しない食文化

 出し入れのバランスをとるということは、ある物を入れるためには、上手に出さなければいけないということを意味します。しかし、現代人は出すことがあまりうまくないようです。
 グルメ時代ですから食べるということを例にとってみましょう。
 私達は食べることには一所懸命です。栄養に気を使い、おいしい店を探し、食べることにはお金もたくさん使いますが、排泄する方には、まったく無頓着なのではないでしょうか。入れる方だけに気を使って、出す方には気を使わないという考え方自体が、生命の潜在力を弱める引き金となっています。悪影響が出ているのに、気付かないだけなのです。
 オープン・システムである人間の身体をうまく機能させるには、無用のものはどんどん出さなければならないのです。ところが私達は、老廃物を出さないうちに次から次へと食物を詰め込んでいます。出さないうちに詰め込むと、大腸の中に老廃物がどんどん溜まっていきます。現代人は便秘の人でなくても、大腸の中に相当の老廃物を溜めているのです。
 この老廃物はトマトにとっての成長阻害要因に相当するものの一つで、人間の生命力を損ない、体内の秩序を壊す方向に作用します。
 こうした老廃物が長く腸内に貯えられると、有害物質が逆吸収され悪い影響を与えます。また、これを分解するためにいろいろな物質を人体は分泌しますが、これが出すぎるための副作用も起きます。あるいは、人体に望ましくない細菌も繁殖します。そうしたもろもろのことが原因となって、便秘性の人の大腸ガンの発症率は非常に高くなっています。
 このような排泄機能の低下がなぜ起きるかと言うと、生命の本質を理解しない食文化が一つの原因です。たとえば、肉食中心で繊維質の野菜をあまり取らない大は便秘がちになります。繊維成分は栄養価はほとんどありませんが、排泄機能を高める効果があり、人体のオープン・システムをうまく機能させるために働きます。ところが、これをあまり取らなくなっているために、排泄機能の低下が起こっているのです。
 これは、出し入れのバランスを崩すと部分的な異常が全体に波及するというよい例です。本来人間は、作られているように生きれば、滅多なことで病気になったりしないのですが、病気になるのは多くの場合、本人のライフスタイルに問題があるようです。
 このように、出し入れのバランスをとることが生命体の秩序形成に有効だということが分かると、さまざまに応用が利きます。
 
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