[幕末明治]
日本は外国人に
どう見られていたか

来日外国人による「ニッポン仰天観察記」
「ニッポン再発見」倶楽部 三笠書房 
第6章 男と女と幸福な子ども

 大人が異常にかわいがる!
 世界一幸福な「子どもの国」


 子どもへの体罰などもってのほか?

 最近、日本では父母による子の虐待のニュースが多くなった。日本人は子育てが苦手な国民なのかと思ってしまうが、そんなことはない。江戸・明治期では、日本人の子ども好き、子育て術は外国人から高い評価を得ていたのだ。
 たとえば、明治時代の日本を旅したイザベラ・バード(イギリス/旅行家)は、「私は、これほど自分の子どもをかわいがる人々を見たことがない」「(日本人は)子どもがいないといつもつまらなそうである」などと記している(『日本奥地紀行』)。
 また、かつては子どもへの体罰もほとんどなかったらしい。江戸中期に来日したカール・ツユンベリー(スウェーデン/植物学者)は、「この国ではどこでも子どもをむち打つことはほとんどない。子どもに対する禁止や不平の言葉は滅多に聞かれないし、家庭でも船でも子供を打つ、叩く、殴るといったことはほとんどなかった」と述べている(『江戸参府随行記』)。江戸時代の日本では、現在とは異なる子育てが行なわれていたようだ。

 玩具と遊戯が溢れる「遊びの王国」

 子育てでは子どもを喜ばせることも大事だが、日本にはおもちゃや遊戯がたくさんあり、その点では西洋よりも恵まれていた。
 明治初期にアメリカからやって来たグリフィスは、「日本ほど子供の喜ぶ物を売るおもちや屋や縁日の多い国はない」という(『明治日本体験記』)。
 さらに、「日本のどの町にも子供を楽しませて暮らしを立てている男女が、何百人とまでいかないが、何十人もいる」とも述べている(同書)。
 江戸後期に来日しかフォーチュンもまた、「玩具店には、あらゆる種類のおもちゃが豊富に陳列されていた。(略)この大玩具店の存在は、日本人がいかに子供好きであるかを証明している」と記す(『幕末日本探訪記』)。
 明治初期に日本を訪れたチャールズ・A・ロングフェロー(アメリカ/一般市民)は、遊戯の多さに言及。「泥まんじゅうをこねたり、羽根つきをしたり、巧みに凧を上げたり、ボールで遊んだり、芝居ごっこをしたりと、遊ぶのに忙しい」と、楽しそうに遊ぶ子どもたちのようすを綴った(『ロングフェロー日本滞在記』)。

 子どもに甘い日本人、厳しい西洋人

 子どもにむやみに体罰を与えず、できるだけ喜ばせて大事に育てる。現代の日本人からみると、甘やかせて育てるというのが、当時の子育てスタイルだったようだ。西洋ではどちらかというと厳しく育てるのが基本だったから、彼らの目には日本人の子育てが奇異に映ったに違いない。
 そうした日本と西洋の育児スタイルの違いを研究したのが、ルース・ベネディクト(アメリカ/文化人類学者)だ。
 ベネディクトは双方の育児様式を比較し、「日本人は子どもを徹底的に甘やかせて育てる」「西洋人は子どもに対してしつけが厳しく、体罰を与えたり、食事なども大人とは別に与えるなど厳格である」と分析。その具体例として、「赤ん坊が泣くと、日本人の母親ならすぐ抱いてお乳を与えて泣きやまそうとするが、西洋人は決まった時間にしか乳は与えないで泣いたままでほうっておく」ことをあげた(『菊と刀』)
 どちらが正しいとはいえない。
 だが、ロングフェローが、
「僕の見たところ、日本の子どもは11、12歳になるまでは、世界でも最も幸福な子どもに違いない」
 と述べているように(『ロングフェロー日本滞在記』)、外国人には日本の子どもたちのほうが幸せに映ったようだ。
 
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